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〜できる人が備える〜
「勝利のための発想法」


生井 利幸(なまい としゆき)

生井利幸事務所代表

明治大学大学院 法学研究科 公法学専攻 博士前期課程修了。
米ペンシルベニア州ラフィエット大学講師、
オランダ王国国立フローニンヘン大学法学部客員研究員等を歴任。
11年の海外生活において主にアメリカの大学で教鞭を執る一方、在ニューヨークの企業を中心に法務・経営・ビジネス戦略に関するコンサルティングを行う。
2003年、日本に帰国。現在、作家として多方面において執筆・講演等を行う。


Vol.50 
世界中のグレートコミュニケーターは「間の概念」を熟知している

「間の概念」は、日本では主に、歌舞伎や能などの伝統芸能に用いられるものです。即ち、個々のパフォーマンスは、それを続けざまに表現するのではなく、特定の場面において空白の部分をつくることによって、ある種の余韻を残す作用がそこにあるわけです。

「空白に“意味”がある」、即ち、「空白をつくることによって“意味”を深める」という表現方法は、まさに”洗練されつくした美的センス”というべきでしょう。私は、この「間の概念」は、国内外を問わず、現実のビジネスコミュニケーションにおいても極めて大きな威力を発揮するものと捉えています。

例えば、アメリカ国内で、シカゴのビジネスパーソンが商用でニューヨークに訪れるとき、ニューヨークのビジネスパーソンに対して、「ニューアーク国際空港からマンハッタンまで何分ぐらいで行けますか?」と尋ねたとします。


通常の人であれば、シンプルに、”It takes about 30 minutes.”と答えるでしょう。しかし、この答え方では、それを聞いた相手は、ただ聞き流すだけとなります。

しかし、先に述べた「間の概念」の効用を用いることにより、上記とまったく同じセンテンスを用いて、”極めて劇的に”、「30分で行ける」ということを強調することができます。

即ち、上記センテンスを話し手が発する際に、話し手は、ただ単に”It takes about 30 minutes.”と発するのではなく、まずはじめに、”It takes about”と言った直後、心の中で1,2,3とカウントし、そして、ゆっくりと”30 minutes.”と言うのです。そうすることで、「ニューアーク国際空港からマンハッタンまで“たったの30分”で行ける」という意味合いをダイナミックに強調することができるのです。

言葉は、同じセンテンスであっても、言い方一つで、その「意味合い」「ニュアンス」が大きく変わってきます。私の考えでは、優れた国際コミュニケーターになるための条件とは、単に英語が喋れるということではなく、このあたりの「感性」(sensibility)に優れているという点にあるのだと思います。


これは、何も、英語を喋るときにのみに言えることではありません。日本語によるビジネスコミュニケーションにおいても、極めてダイナミックに威力を発揮します。

例えば、日本企業同士における日本語での打ち合わせ。通常、仕事に熱心なビジネスパーソンは、打ち合わせの時間において、終始、真面目に無我夢中で話をするものです。しかし、話す本人がどんなに仕事に熱心な人であっても、何の隙間もなく続けざまに話をしているのでは、それを聞いている相手は、心の中で次第に疲労感を感じるようになり、場合によってはそれを聞くのが苦痛になることもあります。

優れた話し手は、話をする際に、適度に「間」をとります。何も喋らない空間を適度につくることによって、打ち合わせにもメリハリがついてきます。そして、さらには、受け身である聞き手自身においても「心の余裕」が生まれ、聞いている案件について「自分も一緒に考えてみよう!」というポジティブな意欲がわくこともあります。

ビジネスコミュニケーションにおける「間」の概念の使い方は、実際、言葉で述べる以上に難しい技であるといえます。では、「ビジネスコミュニケーションにおいて一体どのように“間の概念”の使い方を学んでいったらよいのか」、大抵の人であれば、このような質問を投げ掛けたくなると思います。私が思うに、その答えは、たった一つです。

そのたった一つの答えとは、「自分なりに“実務経験”、“人生経験”を積んで学んでいくしかない」ということです。まさに、”No pains, no gains.”(苦労することなく何かを得ることはできない)ということではないでしょうか。

柔軟性のあるビジネスコミュニケーションスキルというものは、日々のビジネスシーンにおいて、“場数”を踏みながら徐々にアップグレードさせていくものだと私は考えます。「経験こそが学びの母である」という考え方は、世界中のグレートコミュニケーターが説く“共通の理”であるといえます。

 

<生井 利幸講師のコラム バックナンバー>

VOL.49 「アメリカ人の“立ち話好き”をどう捉えるか」
VOL.48 「社員の相手に完璧を求めない人間関係」
VOL.47 「社員の『察する力』『考える力』を養う企業が勝利する」
VOL.46 「社員の『やる気』を引き出す話し方」
VOL.45 「日本経済が必要とする若いビジネスパーソンよ、“しっかり前に進め”」
VOL.44 「人の印象は挨拶ひとつで大きく変わる」

VOL.43 「メール送信は、時として、‘爆弾投下’と化してしまう」

VOL.42 「謝罪の極意」
VOL.41 「トイレでの会話が人の心を掴む」
VOL.40 「打ち合わせにおける笑顔の意味」
VOL.39 「労働の価値の重さ」

VOL.38 「アメリカ人の方便、日本人の方便」

VOL.37 「‘忙しい’を言う? 言わない?」
VOL.36 「愛情あるコミュニケーションが、仕事のクオリティーを大きく変える」
VOL.35 「コミュニケーションと川の水の流れ」
VOL.34 「講演先での素晴らしい出会い」
VOL.33 「スピーチの達人は皆、"役者顔負けのパフォーマンス"で話を進める」
VOL.32 「緊張しない話し方の極意
VOL.31 「ニューヨークのビジネス社会は"人類愛"に満ちている
VOL.30 「東京都葛飾区の公開講座で感じる社会人受講生のパワー
VOL.29 「コミュニケーション力”・“哲学”・“心”の融合が、会社を大きく成長させる」
VOL.28 「"キャッチボール型の会話"をしていますか?」

VOL.27 「「個」を重要視する経営者の精神、個々の社員の精神」

VOL.26 「「哲学」「理念」を養う社員教育の必要性」

VOL.25 「地域社会発展の実現は「真心」にあり」

VOL.24 「コミュニケーションは一体何のためにあるのか?」

VOL.23 「人の顔の表情は、自分の顔の表情の顔である」

VOL.22 「ニューヨークでは、肌の色よりも<チャレンジ精神>が台頭する」
VOL.21 「話上手 グレート・コミュニケーターの本音」
VOL.20 「<裸の王様>になってはいけない」
VOL.19 「<哲学><コミュニケーション><ビジネス>における相関関係」
VOL.18 「<言葉の管理>に優れている人が信用を築く」

VOL.17 「堂々と客に啖呵を切る魚屋の<交渉術>」

VOL.16 「契約社会アメリカの実態は“交渉社会”である」
VOL.15 「経営者の心得・・・ビジネスの達人は“他人を泳がせる器量”を備えている」
VOL.14 「できる管理職は業務命令を下すのがうまい」

VOL.13 「トップライナーが駆使するビジネス・コミュニケーション術」

VOL.12 「一連のIT革命が癒した<負の遺産>」

VOL.11 「プロのエンターテイナーから学ぶ 自己表現を高める方法」

VOL.10 「セールスの達人は<1秒のリズム>で勝負する」
VOL.9 「経営者はCSRの執行者でなければならない」

VOL.8 「<お茶目な人>がビジネスを成功させる」

VOL.7 「給料は、貰うものか、それとも稼ぐものか?」
VOL.6 「日本人は常に<組織の名前>にしがみつく」
VOL.5 「スーツの買い方でわかる意思決定のスマートさ」
VOL.4 「勝ち組人生」とは?
VOL.3 「上司の力量次第で部下の仕事ぶりが決まる」
VOL.2 日本人がアメリカ人から学ぶべき「ビジネスにおける“心の余裕”」
VOL.1 「現実」を踏まえた上で一歩一歩確実に歩む人が、仕事人生を成功させる
 
 

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