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  講師の心.com > 講師マガジン 「人」 > 中村勝雄
 

〜障害から学ぶ プラス思考転換術〜
「120センチは
面白い!」

中村 勝雄(なかむら かつお)
作家

1960年 長崎県生まれ
1981年 平塚養護学校・高等部卒業
1981年 映画監督・木下恵介氏に師事
1985年 ATG映画脚本賞・佳作
1991年 24時間テレビに出演
1994年 日本テレビ編成局・2年間契約社員
1999年 短編小説集『涼子〜Hello my love〜』出版
2001年 小学館ノンフィクション大賞・優秀賞
2002年 受賞作『パラダイス ウォーカー』出版
2003年 NHK『福祉ネットワーク』出演・3回の再放送
2003年 東京(中日)新聞にエッセイを33回連載
2004年 冬、「ぼくと妻の〜妊娠・出産騒動記〜」(仮タイトル)を出版予定


第53回 「ネバーギブアップ」

1978年秋のこと、ぼくは17歳だった。 養護学校の高等部にいたものの、
障害の重さから将来の希望など皆無というより、どうして自分は生きているんだろとさえ思っていた。
小さな図書館にこもって様々な本を乱読したが、その答えは見つからなかった。
なかでも自らが「男」であることが、いやでたまらなかった。
自身のこんな身体(からだ)では、本当の男にはなれない。

そんなとき高倉健主演の『野生の証明』を観た。
うる覚えだが映画のポスターには、目立つ文字で「ネバーギブアップ」とあった。

近づくとハードボイルド作家、レイモンド・チャンドラーの
「男は強くなければ生きられない。優しくなければ生きている資格はない」
という言葉があった。
以後、ぼくの心には「ネバーギブアップ」がある。

そのポスターに引き寄せられるように映画館に入った。
車イスでの身長が120センチのぼくは、劇場の後方のドアから入って、
通路になっている階段の一番上から、車イスが落ちないように気をつけながら
映画の世界にのめり込んだ。
たとえ虚構の世界でも健さんが演じる、主人公の味沢に男の生き方を教えられた気がした。
映画というか物語は、こんなにも面白いものなのかと、
その後に作家になろうとしたきっかけとなっている。

以来、数多くの映画を観ている。そして、いつのころからか劇場にも車イス席が設置されるようになった。
ところが、その大半がスクリーンの目の前、
映画をプラネタリュームのように観なければならない最前列なのだ。これは辛く途中で帰りたくなる。
たしかに車イス席がなく、階段から落ちないように気にしながら映画を観ていたころに比べれば
バリアフリー化されているのは有難い。

けれど同じ観客としては、やはり真ん中あたりから映画を楽しみたい。
ど真ん中でなくても、その両サイド付近のシートをいくつか撤去して、
ほんの数台の車イス席を作ることは、さほど難しい工事や設備が必要だとは思えない。

たしかに劇場側=経営者からみれば、たまにしか来ない車イスの客にそんな配慮が必要なのか?
それも否定できない現実だろう。
しかし、もしも設計者の方が、自分自身が車イスの客として楽しみに映画を観ようとしたとき、
スクリーンを見上げて2時間も我慢させる設計にするのか、どうなのだろう。
チャンドラーの言葉を借りれば「経営は儲(もう)けなければ生き残れない。
優しくなければ経営者の資格はない」と思う。





<中村 勝雄講師のコラム バックナンバー>

第52回 「勝手に弟子になる

第51回 「心こそ大切なれ

第50回 「天使か悪魔(2)
第49回 「天使か悪魔(1)

第48回 「ついに完成」

第47回 「もう一度会えたら」

第46回 「C前・M後ろ」

第45回 「シュウカツ」

第44回 「ケータイ・携帯からもらった恩恵
第43回 「執念のチカラ」
第42回 「緊急発進」
第41回 「ダメだった時」
第40回 「答えのない福祉」
第39回 「親になってみると(5)」
第38回 「親になってみると(4)」
第36回 「親になってみると(2)」
第37回 「親になってみると(3)」
第36回 「親になってみると(2)」
第35回 「親になってみると(1)」
第34回 「娘への想い」
第33回 「前略、坂本竜馬さま」
第32回 「夏の坂道」
第31回 「一期一会」
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第29回 「二十歳の誕生日」
第28回 「On the edge」
第27回 「M・M」
第26回 「今を大切にしたい」
第25回 「われ以外皆」
第24回 「キャベツ」
第23回 「異星人?」
第22回 「福祉って何?」
第21回 「桜桃忌」
第20回 「優しい隣人」
第19回 「創る人びと」
第18回 「川べりに行く」
第17回 「情熱の行方」
第16回 「おやじの地図」
第15回 「歌チカラ」
第14回 「名刺物語」
第13回 「人に会うこと」
第12回 「お米の花」
第11回 「小さな親切?」
第10回 「新しい日本人」
第9回 「恐れないこと」
第8回 「巨人ぎらいからの卒業」
第7回 「革靴とスニーカー」
第6回 「チョコレートの食べ方」
第5回 「巧みの技」
第4回 「太い万年筆」
第3回 「イチロー選手に学ぶ」
第2回 「初めて講演会に行った日」
第1回 「思えば遠くへ来たもんだ」
 
 

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