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「今を読み、明日に備える」

藤田正美 (ふじたまさよし)

元ニューズウィーク日本版 編集長

<生年月日> 1948年生まれ
<最終学歴>  東京大学経済学部卒業

東洋経済新報社で経済記者を14年勤めた後、
ニューズウィーク日本版創刊に参加。
1994年から2000年まで7年間、同誌編集長、
2001年より同誌編集主幹。
2004年に退社し、現在フリージャーナリストとして活動。


Vol. 44
 「ビッグ3救済作戦」

金融危機の影響が実体経済に及んでいる。日米欧同時景気後退に陥ることは確実で、そのような状況は第二次世界大戦後初めてのことだ。そのため、11月中旬に開かれたワシントンでのG20金融サミットでも、そのペルーのリマで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)でも、各国が財政出動によって景気刺激をするということを確認した。

その一方で、経営が苦況に陥っている金融機関の救済が着々と行われている。とりわけ9月末に金融安定化法を成立させたアメリカでは、7000億ドルの予算を使って金融機関に資本注入などの支援を実施中だ。最近では世界最大の商業銀行であるシティに対しても救済策を講じることを明らかにした。

そこへ降ってわいたのが、自動車業界の米ビッグ3の救済話だ。GMをはじめとするビッグ3の首脳は、ワシントンを訪れ、議会の公聴会に出席。資金繰りが窮迫していることを訴えて、支援を要請した。

もっともブッシュ政権はビッグ3への支援について慎重であるし、世論も反対する声が強い。自由主義を標榜しているアメリカでは、私企業に対して政府が介入することはないというのが普通である。しかし金融については、もともとが「規制産業」であることと、破綻した場合にはあまりにも影響が大きいことから救済することになった(しかし、金融安定化法も一度は下院で否決されている)。

オバマ次期大統領が、選挙戦の終盤にかけてビッグ3救済を打ち出したことや、連邦議会は上院、下院とも民主党が多数を占めたこと、さらにペロシ下院議長なども救済に前向きであることから、ビッグ3は資金援助への期待を高めていたようだ。

しかし議会での公聴会では、「経営者の報酬を年1ドルにしてもいいか」「自家用ジェットではなくどうして普通の旅客便を使わないのか」などと、厳しい質問にさらされた。こういったことからビッグ3への支援法案が現在の連邦議会で採決される見通しは暗くなっている(昔、リー・アイアコッカがクライスラーの再建に入ったとき、彼は再建するまで自分の報酬は年1ドルでいいと宣言したことがあり、それを受けて「年1ドルにしていいか」と議員が聞いた)。

しかしビッグ3を破綻させることは、アメリカ経済にとってきわめて深刻な影響をもたらす。100万人単位の失業者が出るとされ、もしそうなったら、10月時点で6.5%の失業率がふた桁になる可能性もある。景気を下支えするために、勤労者家庭の減税などを行おうとしているオバマ政権にとっては、失業率が急上昇するようなことだけは何としても避けなければなるまい。

そのため年内の議会で救済法を通せなくても、来年1月20日にオバマ大統領が就任することに加え、連邦議会も今回の選挙で民主党が勢力を伸ばしているだけに、民主党主導での救済がしやすくなるだろう。ただ救済する理屈をどうつけるかは苦労するはずだ。もし単純に経営支援ということになれば、他産業でも苦境に陥った企業が財政支援を求める可能性が生まれてしまうからである。

国民の気持ちはすでにブッシュ政権から離れてしまっているが、オバマ大統領がビッグ3をどういう形で支援し、それを国民にどう説明するのか。この支援の形によっては、欧州や日本でも同じようなことが起こる可能性があるだけに、世界が注目している。

 

更新日: 2008年12月1日



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