Vol.3 『中国のカントリーリスク』
日本企業の中国シフトが続いている。2004年の実績でみると、過去最高水準。
もちろん日本だけでなく、世界からの直接投資も過去最高を記録しているから、やはり中国が21世紀の経済大国になるはずだという認識は強いのである。たしかにそうなのだろう。人工は13億人、しかも2008年には北京オリンピックが開かれるし、2010年には上海で万博も開かれる。
今の中国はこの2つの大イベントを成功させるべくひた走っているように見える。
もっともこのまま中国が走り続けられるかどうかについては見方がわかれる。
日本も戦争に敗れ、がれきの中から奇跡の経済復興を遂げてきたという実績がある。
その当時の日本と今の中国を比べたとき、今の中国のほうがむしろ可能性が大きいということもいえる。
すでに中国には多数の消費者層が存在している。上海などでは高級マンションが飛ぶように売れているというし、街を歩けば高級外車もたくさん走っている(日本でベンツやBMWがたくさん走るようになったのは、それほど昔のことではない)。消費者層が存在するということは、国内経済が活性化するための基本的な条件である。
それに何と言っても豊富な労働力という最大の武器がある。いわゆる沿海州では賃金もずいぶん上昇してきたとはいえ、まだ賃金競争力はあるだろう(通貨元の切り上げがあればもちろん競争力はかなり減殺されてくるだろうが)。中国への直接投資がこれまでの沿海州から西のほうへ向かっているのを見ても、まだまだ懐が深いという感じはする。
しかし不安がないわけではない。要因はいろいろだ。ひとつは内陸部と沿海部の経済格差の問題。
これが社会不安の原因になりかねない。さらに国有企業の整理はそろそろ終わりに近づいているというが、これで中国の金融不安が本当に発生しないかどうかという問題もある。そして最大の不安は中国の政治体制だ。経済は資本主義、政治は社会主義という体制がどこまで続くのかということである。経済的な自由がやがて政治的な自由に発展していくというのは歴史の教訓でもある。
そうしたリスクを実証してしまったのが、今年3月から4月にかけての「反日デモ」であった。このデモは今では官製デモという見方がすっかり定着しているようだが、官製であれ自然発生的なものであれ、どちらも中国という国が抱える政治リスクを諸外国に再認識させるものであった。
中国政府が意図的にデモを組織し、それを日本の外交施設に向かわせたのなら、政府が民衆を利用して政治的な目的を達成しようとする国だということになる。これは民間企業にとっては大きなリスクだ。外交関係が冷え込んだら直接的な暴力の対象にされてしまうからである。もしあれが自然発生的な民衆のデモが暴力化したのなら、そのような暴力行為を政府が「放置」する国だということになる。外国人の安全を保証しない(あるいは保証しようとしない)国など危なくて行けるものではない。
外国があの反日デモについて、こうした反応をしたために、中国はあわてて矛先を収めた。しかしそれは逆に現在の中国政府の危なっかしさを強調することにもなったのである。現在の胡錦寿政権がどれほど安定的なのか、国内の政治的不満を処理できるのか、国内反対派の矛先をそらすために外国を利用することはないのか、そして人民解放軍をどれだけコントロールできているのか、というような疑問が噴出する結果になった。
世界最大の工場となりつつある中国に企業が進出するのは当然だし、やがて世界最大の単一消費市場となるのだから、拠点を築いておきたいのも理解できる。しかしこうしたリスクを抱えているということに気がつかないと思わぬしっぺ返しを食うことにもなりかねないのである。
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