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Vol.
22 『エネルギー不安』
石油業界の推計によると、2006年の原油の中東依存度は89%程度になったようだという。新聞記事によると「中東への過度な依存を避けるため、石油元売り各社が調達先を多様化した動きを反映」したものだそうだ。しかし89%でも十分に過度に依存している。もともと湾岸戦争のときは70%程度だったが、その後、石油公団の解体とか何とかやっているうちに通産省はエネルギー資源の安定化ということをすっかり忘れてしまったかのように見える。
一方、アメリカのブッシュ大統領は、2017年までにガソリン消費量の20%削減を打ち出した。そのためにバイオエタノールなど代替燃料の供給を急増させるという方針を打ち出した。温暖化ガス排出削減を強制することに徹底的に反対してきたブッシュ政権の「心変わり」を思わせる。先の中間選挙で民主党に負けただけに、環境問題に熱心な民主党にすり寄ろうとしたのかもしれない。
ただブッシュが「グリーン」になった動機はそれだけではない。中東など危険な地域からのエネルギー輸入を極力減らすべきだというエネルギー安全保障がいちばんメインの狙いなのである。これに伴ってアメリカは石油の戦略備蓄も倍増やし、純輸入55日分から97日分にするとしている。ブッシュ大統領がこの方針を打ち出したのは1月23日に行われた一般教書演説だが、その前からイランに対して攻撃をかけるという説が流れている。
このイラン攻撃説とアメリカのガソリン消費節約方針とを重ね合わせると、あまり気持ちのよくないシナリオが見えてくる。イラクで足を取られているブッシュ政権は、支持率の回復と中東での事態の打開に向けて、イランの核施設空爆を実行するのではないかということだ(核施設を空爆して破壊した例として有名なのは、1981年にイスラエルがイラクのオシラク原子炉を爆撃したケースだ)。
最近アメリカがイラクの治安悪化にイランが関与しているとし、神経をとがらせている態度を示すのも、イランを攻撃する複線にしているつもりなのだろうか。
イランの核開発に対して、経済制裁が発動されたり、あるいはアメリカが空爆という限定的な手段とはいえイランの核施設を攻撃した場合、日本の立場は微妙になる。なぜなら日本の原油輸入のほぼ15%はイランから来ているからだ。アメリカは昨年、しきりに日本が原油を大量にイランから輸入しているからといって、イランへの経済制裁に及び腰になってはならないと釘を刺していた。イランは核施設を破壊されるようなことがあれば、いろいろな形で反撃を試みるだろう。アメリカの同盟国である日本に対しては、原油輸出を停止するかもしれない。日本が果たしてそういう危機的なシナリオに対する心づもりができているか。その答えはノーである。
もしこうした危機が起こらなくても、エネルギーのほとんどを輸入に頼る日本は、エネルギー安全保障をアメリカよりもさらに真剣に考えなくてはなるまい。サハリンで天然ガス・石油の開発をしているが、ロシアは環境問題で難癖をつけて、このプロジェクトの半分の株をガスプロムという国営独占ガス企業に譲渡させた。日本のエネルギー輸入先の多様化という場合、まっさきに思い浮かぶ相手はロシアであるが、現在のロシアは一種の資源国家資本主義とも呼べそうな行動をする。昨年始めにはウクライナへの天然ガス供給を、価格問題と絡めて停止した。またベラルーシとも価格問題でもめ、パイプラインの栓を閉めると脅した。その意味では、中東よりも危険な相手国かもしれない。
そうした状況を考えると、輸入先の多様化というだけでなく、自動車の燃費改善、工場の省エネなど、「化石燃料依存からの脱皮」も視野にいれておかなければなるまい。
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