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Vol. 26 「いざ参院選へ」
「なんとか還元水」で追及されていた松岡利勝農相が突然自殺して、政界に激震が走ったのが5月28日。この事件もそうだが、安倍総理には支持率の低下のほうがもっとショッキングだったかもしれない。
偶然にも同日発表された日経新聞の世論調査では前回よりも10ポイントも落ちて支持率は41%(不支持率44%)になった。また29日に発表された朝日新聞の世論調査(調査時点は26、27日)では支持率が過去最低の36%(不支持率42%)になった。とくに朝日新聞の調査は参院選へ向けて1週間毎に行う連続調査で今回が3回目。支持率は43%、44%と推移してきた上での36%への急落だから、その分ショックが大きかったはずだ。
安倍首相は、このところやや勘違いをしていたのではないかと想像する。就任以来支持率が低下してきたのは「安倍らしさ」を出さなかったからだとされ、今年にはいってからは憲法問題を中心に、安倍カラーを前面に押し出してきた。松岡氏の不透明な支出についても「適法に処理したと言っているから適法だ」とおよそ疑惑を解消しようという姿勢すら見せず、強引にかばい続けた。しかし、それが裏目にでた。
ひとつは、憲法問題よりも年金という国民にとって、より身近な問題で前代未聞の不祥事が明らかになったことだ。5000万件もの気が遠くなるような数の支払記録が宙に浮いているというのである。もちろん5000万人の加入者の記録というわけではなく、年金番号の「名寄せ」がうまくいかなかった数だから、実際の「被害者」はもっと少ない、といっても1000万人を越えるような人が支払った記録が宙に浮いている。しかも支払記録が失われてしまったものもあるというから、社保庁はいったい何をやっているのかと国民が怒るのも無理はない。さらに支払ったはずという苦情を申し立てると証拠書類がなければだめだと言い、支払ったことを証明しても時効があるから5年分しかさかのぼれないと言われたら、たいていの国民は頭に血が上るだろう。
年金は自分が積み立てたお金を自分がもらうわけではないが、国民が国に預けた金である。それをあずかっておいて、記録を失った当局が国民に払ったことを証明しろというのは筋違いも甚だしい。まして国の違法行為によって起こった損害を時効というのも納得のいかない話である。社保庁という役所、ひいてはそれを管轄する厚生労働省という役所がいかに加入者の側に立った年金運営を行っていないかを証明するような話だ。
さらに松岡大臣の死でいよいよ政治とカネの問題に引っ込みがつかなくってしまった。「なんとか還元水」で言い抜けができなかったことを自ら露呈したようなものだからである。公明党が中心になって政治資金規正法をまとめ、それを自民党にのませはしたものの、これがまったくのザル法。今までは領収書の添付が必要なかった支出に、添付を義務付けたのはいいが、金額が自民党の強い抵抗で5万円以上となった。これでは4万9999円以下の支出が増えるだけだ。それに資金管理団体だけに義務づけ、そのほかの政治団体は放置した。つまり支払主体を変えれば今までとまったく同じという体制にしたのである。この法律で安倍首相が「襟を正した」というのはあまりにもおこがましい話。これでお茶を濁そうとすれば反発は必至だと思う。
それにしても松岡農相を政権内にとどめたのは安倍首相の大失敗であった。政権発足半年ほどで政治資金のスキャンダルで2人の閣僚を失えば政権の基盤が危うくなるという読みだったが、自殺で事態はさらに悪くなったということができる。政権維持のために大臣を見殺しにしたからである。安倍総理がすぐ松岡大臣の遺体に面会したのも、もしそれをしなければ「見殺しにした大臣のところへ駆けつけもしない冷血な総理」ということになるからだ。その意味では、自民党内の求心力も弱まってくるだろう。現に古賀誠元幹事長は、憲法問題にこだわって公明党との間にすきま風が吹くようなことはよくないという苦言を呈している。
7月の参院選まで、年金や政治とカネの問題にある程度決着を付けられるのかどうかで参院選の雲行きは大きく変わってくる。しかし今のところ安倍首相がほっとするような材料が一つもないことだけは確かだ。
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