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Vol. 27 「日本を支える新しい産業」
今でこそ景気の足腰は比較的強いように見えるが、ちょっと長期的に考えてみると、不安な面ばかりが目立つ。いちばん大きな不安は人口の減少だ。すでに産業界からは労働力の不足から、移民労働者の受け入れといった話も出ているほどだ。しかし、最も懸念されるのは「消費者の不足」である。
たとえば自動車販売。昨年度の新車登録台数は前年度比8.3%減の359万台。4年連続で前年度比マイナスだ。1990年度が過去のピークだそうだが、その年には何と590万台も売れた。ざっと40%近く減っている計算だ。なぜこんなに売れないのか。自動車業界では、基本的に景気のせいだと考えてきた。景気は戦後最長の拡大期といっても成長率は微々たるものだし、労働分配率は景気拡大とは連動せずにむしろ下がっていたから、車を買うような余裕は生まれにくかったかもしれない。去年ぐらいから、任給が上がるケースも散見されるし、パートや派遣の賃金も上がる方向にある。労働者の所得が増えてくれば、自動車の購入に結びつくこともないとはいえない。
自動車の販売台数が増えることはありうるだろうが、過去のピークに迫る可能性はほぼゼロだろう。ピークよりも40%も減っているということは、景気循環ではない構造的な要因があることを思わせる。そこですぐ考えつくのは人口動態だ。いま30歳台前半になっている団塊ジュニアのところから、年齢別人口は一貫して先細り(このところ出生率が上昇しているからこの辺りで下げ止まるのかもしれないが)。20歳から24歳が自動車を購入するエントリー層といい、この年齢層が着実に減っていることが自動車販売に影響を与えているのだという。
この自動車販売の減少は、人口が減ると経済活動にマイナスの影響が生じることを象徴していると思う。一部には人口が減っても豊かさを保てるという議論があるが、そうはいくまい。生産年齢人口が減ると、当然収入が減り、その結果消費が落ちる。
人口を増やす努力をしなければならないが、それと同時にこうした人口減少社会を支えていく産業とは何かということを考えなければならない。少なくともこれまでのような製造業ではないのかもしれない。人口が減っているのだから、当然市場規模は限られてくる。高付加価値品といっても、いたずらに機能ばかりが高度化した商品はむしろ敬遠されてしまうかもしれない(消費者が高齢化するからである)。
製造業でなければ、日本が不得意とするサービス業はどうだろう。そこでふと思いつくのが、医療という「産業」である。あまりビジネスとしてとらえると、コムスンみたいな話になりかねないが、医療は総額で32兆円もある立派な産業である。現在は、厚生労働省が医療費の抑制に躍起になっているとはいえ、高齢化社会では医療費の増加は避けられない。しかも、日本の医療費が他の先進諸国に比べて低いということは周知に事実になりつつあるから、やがては医療費を増やすということも検討されることになるだろう。医療費をGDP(国内総生産)の10%という先進国の平均並にすれば、総額で50兆円。いまよりも50%以上は増える勘定だ。
医療にせよ介護にせよ、サービス産業としていいところは、患者や利用者が増えれば、働く人を増やさなければならない産業であるということだ。その意味では、労働生産性を高めるという従来の製造業的発想は向かないのかもしれない。いたずらに効率化を図ることよりも、むしろ丁寧なサービスをきちんとした価格で売るという考え方に転換する必要があるのかもしれない。
日本の少子高齢化・人口減少社会を経済的にどういった産業で支えていくのか、そのイメージを描けなければ、日本という国が衰退していくのは避けられまい。
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