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Vol. 31 「やっぱり来た消費税」
小泉政権の時代には「自分の任期中は上げない」とされ、安倍政権のときは、結局は先送りされていた消費税。ここに来て急に消費税論議が活発になってきた。まあもともと2007年秋にはと言われていたのだから、ようやく元の軌道に戻ったということなのだが、改革はどうなったのかとやや不安でもある。
2007年10月17日の経済財政諮問会議の民間議員が提出した資料によると、2011年度までに11兆円から14兆円の歳出削減を行うという歳出改革を進めていったとしても、2025年度には医療・介護の給付を現状と同様に維持するとして、29兆円弱の増税が必要という試算結果になっている。29兆円というと消費税率にして12%分ぐらいになるだろうか。現在5%の消費税率を17%にしなければ、また財政赤字が増えるだけだという。もちろんこれは経済成長率が名目で2.1%とやや低めに計算されてはいるが、高めの成長率(名目で3.2%)だとしても14兆円強、消費税率にして6%程度の増税が必要となるという。
給付水準を維持するのか、それとも負担を上げないようにするのかという議論になるのだが、現在の医療や介護の水準はとてもあるべき水準とは言えないという事実を押さえておく必要があるだろう。
たとえば国民医療費。2005年の数字がいちばん新しいものだが、これを見ると総額で33兆円だ。そしてこれを誰が支払ったのかを見ると、公費負担(国および地方自治体)が12兆円、保険組合が16兆円、そして患者負担が5兆円である。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/05/kekka1.html
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/05/kekka3.html
この33兆円という数字は約500兆円のGDP(国内総生産)から見ると約6.6%だ。ちなみにアメリカは国民医療費はGDPの約15%に達する。ただアメリカは医療費も高いし、医師の収入もべらぼうに高いから比較にならないとしても、日本並みの水準にあるのは、今や医療が崩壊しているとされるイギリスぐらい。OECD加盟国の平均は10%程度だ。もし日本が10%を目標にするのであれば、医療は50兆円ということになる。つまり後17兆円を増やしても他の先進国並みということだろう。
まして今、厚生労働省は医療費を減らすべく、たとえば長期療養病棟(リハビリなど)を減らすとか、診療報酬を削減するとかの行動を取っている。つい最近は、開業医の所得が勤務医に比べて80%も多いという調査結果を発表した。これは開業医の診療報酬の引き下げという話に直結することになるが、日本医師会は猛反発するだろう。
勤務医からも反発する声が上がりそうだ。開業医が高いのではなく、むしろ勤務医の収入が少ないという声である。たしかに勤務医の話を聞くと、月に100時間近くオーバーワークとなっていることも珍しくなく、産科医や外科医ともなれば四六時中病院から呼び出される。当直明けに手術(つまりほとんど睡眠を取らずに手術)などということもしばしばあるのだそうだ。それでいて、たとえば済生会栗橋病院の本田宏副院長は年収で約1800万円だという。しかも出身大学の医局の都合で病院を次々に転勤する医師は、普通のサラリーマンのような退職金がないのだという。これでは勤務医から怨嗟の声があがるのは無理もあるまい。ただし世論は、厚生労働省の思惑どおり「医者は儲けすぎ」という雰囲気になると思う。
介護の現場からも悲痛な声が聞かれる。若いうちはまだいいが、介護を長く続けていても給料は上がらない。ベテランが介護しても、介護収入が増えるわけではないから、雇用主も人件費を増やすわけにいかないからである。しかも厚生労働省はさらに介護費用を削減する方向に動いている。こうなると介護の現場は、若い人が希望に燃えて入ってきて、すぐに燃え尽きて離れるということになりそうだ。なぜなら介護施設に勤めていても、普通のサラリーマンのように収入が増えていくわけではないからである。年収300万円もいかない状態で大変な仕事を何十年も続けることはできない。それは容易に想像がつくことだ。
つまりわれわれは、もっと負担をするから、介護や医療の水準を上げるべきだという選択をするか、それとも負担をしたくないから介護や医療の水準を切り下げるべきだという選択をするか、その岐路に立っているのである。そしてもし介護や医療の給付を下げると、日本の介護や医療は崩壊することになる。われわれはそれを望むのかどうか、厚生労働省の世論調査にたぶらかされることなく、真剣に考えるべきだと思う。
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