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Vol. 32 「危うしアメリカ経済」
アメリカの低所得者向け住宅ローン、いわゆるサブプライムローンの延滞に端を発したサブプライムショック。アメリカの景気に悪影響を与えるだけでなく、ドルの独歩安も招いている(おかげで円は急激に上昇し、ドルを買っていた個人投資家などは大変な損を被ったのではないかと思う)。
問題はアメリカが風邪を引いたら、世界は肺炎を起こすのかどうかということである。イギリスの経済誌エコノミストは、以前から世界経済を牽引する機関車国は、アメリカだけではないと指摘してきた。アジアをはじめとする発展途上国の比重が日増しに高まっているからである。
11月17日号でこう書いている。「アメリカの景気後退が世界の景気を悪化させるか。ヨーロッパや日本は景気が回復しているとはいえ、世界を引っ張るほどの実力があるとは思えないし、通貨が強くなれば(ユーロや円)輸出競争力は低下する」
日本やヨーロッパが機関車国になれないとすれば、「世界経済は主たる原動力を新興経済国に依存することになる。これらの国の成長率は年間7%前後、為替相場で換算してもいまや世界のGDP成長の半分は新興経済国のおかげなのだという。過去10年間、先進国が新興経済国を救ったこともあるが、今回、救援にかけつけるのはむしろ新興経済国になるのかもしれない」という。
もちろんアメリカの景気が悪くなれば、対米輸出が減るのは事実である。日本の株式市場もその懸念から、円高やアメリカの動向を気にして動く。しかしエコノミスト誌はこう指摘する。「2000年以来、アメリカの世界の輸入に占めるシェアは19%から14%に下がった。最近、アメリカの貿易赤字が減り始めているのも、要するに輸入が減っているということだ」
これは裏を返せば、中国やインドがすでに内需主導型で成長し始めているということだ。今年前半、中国、インドの消費の増加額は、アメリカの消費の増加額を上回っている。つまり世界経済への貢献度はアメリカよりも大きくなっている。
それだけではない。エコノミスト誌によれば、新興経済国が資金を先進国に依存する時代から脱却している。「新興経済国が保有する外貨準備は、世界の合計額の4分の3ほどに達している。さらに多くの国が財政赤字も抱えていないため、もし輸出が弱くなれば財政出動で内需を刺激することも可能だ」
もちろん、新興経済国だけで世界経済を牽引することができるわけではない。それに原油価格が上がれば、その影響は先進国よりも新興国のほうが大きい。それにアメリカ経済が弱くなることがドルの弱体化をさらに進めるとすれば、世界経済の構造自体が変わってくることも予想される。もしドルからユーロへのシフトが大々的に起これば、金融の世界での大地殻変動につながる可能性もあるだろう。
2008年は、アメリカは大統領選挙の年。ドルの弱体化と重なるのは、ある意味で最悪のタイミングだろう。ブッシュ大統領は、経済政策において強力なリーダーシップを発揮できなくなるからだ。そして、ドルが弱体化することが、民主党のヒラリー有利と言われる大統領選挙に、どのような影響を与えるのか。来年のアメリカ経済は要注目である。
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