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  講師の心.com > 講師マガジン 「人」 > 村田佳壽子  特別対談<前編>(2/2)
 

 

村田:

環境問題と経済問題は切っても切り離せない関係ですよね。1980年代後半から90年代初頭にかけて自然災害が頻発し、アメリカでは損害保険会社が次々に倒産した事実もあります。日本でも、2004年7月に新潟と福島を襲った集中豪雨で、被害額が73億円にも上ったともいわれました。今後、こういった自然災害が頻発化・大型化していくと、ひと晩で何十億円ものお金が失われ、さらには人命まで失われる事態は免れません。このようにリスクが顕在化しているのに、多くの日本企業が環境問題に対して本腰を入れられないのはなぜでしょうか?

末吉:

やはり、リスクを我が身に置き換えられないのでしょう。実感していれば、とっくに対策をとっているはずです。市民団体の影響力が大きいヨーロッパでは、環境問題に対して無策の企業は、NGOによって経営の窮地に追いやられるほどに糾弾されます。日本では、そこまで一般市民の力が強くないために企業の切迫感が高まらないのも要因の1つです。

村田:

そのような社会からのプレッシャーを含め、今のところ売り上げに直接の影響がないために後回しにしてしまうんですね。事実、対策をとろうとすれば先行投資をしなければなりません。環境対策の減価償却は5年といわれていますし、ましてや現在の景気では、先延ばしになりがちです。そう考えると、日本企業の経営スタイルにも関わってくる話ではないでしょうか。

末吉:

おっしゃるとおりです。従来の日本企業は、安定株主のもとで、人材の社外流出も少なく、長期的経営プランを立てていました。そのスタイルが「強み」でもあったのですが、いわゆるグローバル化の波によって、アメリカ型の短期志向にシフトしました。しかし、現在のアメリカ企業は逆に長期的経営プランにのっとって環境対策に本腰を入れています。経営スタイルが日米で逆転しています。

 ですから今後、いわゆる“フラット化する世界“において、現在のままでは日本企業にアドバンテージがないのは火を見るより明らかです。むしろハンディキャップになると考えたほうがいい。企業経営者は、環境対策をあくまでもビジネス戦略の1つであると認識するべきです。厳しい言い方かもしれませんが、それができない企業は「経営者の怠慢」と見られても仕方ないでしょう。

村田:

先ほど、日本における市民の力は欧州と比べるとまだ小さく、企業への影響力が弱いという話が出ましたが、消費者から企業への働きかけはやはり重要でしょうか?

末吉:

もちろん、消費者は物凄い影響力を持っています。消費者を敵に回せば企業は潰れます。しかしそれは消費者を全体的に捉えた場合の話です。個人単位で見れば、社会的には極めて弱い立場、あるいは情報が得られない立場にあります。かたや企業経営者という立場は、自分が何かを決断すれば社会の物事が動くポジションにあります。そう考えると、「一消費者」と「一経営者」とを比べたら、間違いなく後者の踏み出す一歩のほうが大きく、社会に大きな影響を及ぼします。ですから、まずは経営者が動かなければならないし、動くべきだと私は考えます。

村田:

いわゆる「グリーン・コンシューマー」という、環境のことを第一にして商品を選ぶ消費者が増えれば、企業の姿勢も当然変わってくるとは思いますが、消費者のほうも意識はあるものの行動にはなかなか表れてこないのが現実ですよね。やはりどうしても「こっちのほうが安いから」という基準になってしまう。消費者側の意識改革を待っていては、企業の危機感はいつまでたっても高まらない。

末吉:

それが現実です。ですから、まず企業が最初の一歩を踏み出して、自分達だけが動いても何も始まらない、ということになったときに、初めて消費者に向けて訴えればいいのです。「皆さんが動かないと、結局は皆さんにもツケがまわってきますよ」と。「これは我が社の問題でもあると同時に、ゆくゆくは皆さんの問題でもあるのです」と、論拠を出してメッセージを発信すれば、社会が大きく変わる可能性が高いでしょう。

 当然の話ですが、地球の存続なくして企業の存続はありえません。その当たり前のことを改めて認識して、環境対策が自社のリスク管理上、極めて重要な問題であると捉えて行動していく企業が求められていく。逆に言えば、それができない企業は「負ける」といっても過言ではないでしょう。

村田:なるほど。日本企業の環境への取り組みは、厳しい段階にあることがわかりました。

 次回の後編では、実際に「環境」という切り口でビジネスを展開している企業の事例を取り上げながら、現在の危機的状況をビジネスチャンスに転換していくための具体的なお話をおうかがいしたいと思います。


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<村田佳壽子講師のコラム バックナンバー>
Vol.2 「その花の時」
Vol.1 「エコ贔屓」


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