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「企業を変える人材マネジメント」

小杉 俊哉(こすぎ としや)

(株)コーポレイト・ユニバーシティ・プラットフォーム代表取締役社長

1982年 早稲田大学法学部卒業。
1991年 マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院修士課程修了。
大学卒業後、日本電気株式会社(NEC)入社。
マッキンゼー・アンド・カンパニーインク、ユニデン株式会社人事総務部長、
アップルコンピュータ株式会社人事総務本部長を経て独立。

現在、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教授、
株式会社コーポレイト・ユニバーシティ・プラットフォーム代表取締役社長、
その他数社のベンチャー企業社外取締役を務める。


Vol. 2 支援・自律 その(1) 〜社員の自律


 私は、8年ほど前から、社員が主体的にキャリアを構築していくためのお手伝いをするキャリア自律プログラムを、約4,000名の企業で働く社員に受講してもらってきました。開始当初は、キャリア自律が必要だという話をすると、ほとんどの経営者や人事担当者は、「そんなことをしたら、社員が辞めちゃうじゃないですか!?」という反応でした。

 ちなみに、「自立」とは独り立ちすること。会社であれば、上司・先輩の手を煩わせずに、自分の給料分きっちり働くということです。それに対して、「自律」とは、自ら律する訳ですから、自分の仕事を自分で創りそれに対して責任を負うということです。つまり、その対立する概念である、「他律」ではないということです。他律ということは、常に誰かに律せられている状態であり、会社や上司の命に従ってやっている、という意識を持ってやっているわけです。これだと、上手くいかなくても、それは「上司の指示が悪かった」から、「会社が自分の実力を理解していない」から、と文句を言うことになるのです。  

  でも、本当は上司の指示に従ったのも自分の意志のはずです。なぜなら、もし本当に嫌だったら従わないことも出来るからです。「そんなことを言ったって、業務命令、というものがあるでしょう」と言う人がいます。「でも、そんなの関係ねー」、と言うこともできます。たとえば、あなたがもう会社を辞めようと意志を固めていれば、従わないでしょう。

  会社に入社することを決めたのも自分の意志、そして今日現在会社にいると決めていることも自分の意志です。多くの選択肢の中で、日々あなたは会社にいることを選択しているのです。

  個人が手を挙げて参加する研修は別ですが、入社○年目を対象、○職級を対象とした集合研修などでは、参加者に「なぜ、いまここにいるんですか?」と聞くと、「人事部から参加するように通知が来たから」あるいは、「上司から出るように言われたから」と多くの人は答えます。でも、人事部長や上司に無理矢理研修所に連れてこられた人は皆無です。人事部や上司からの働きかけは、実はきっかけにすぎず、皆、自分の意志で参加することを選択しているのです。

  現代の日本は憲法で職業選択の自由が保証されており、国民は基本的には自らの意志で職業を選んでいます。つまり、会社にいること、いまここにいることを自分で決めているのです。これが、自律の出発点であり、そしてもっとも重要なポイントです。そんな重要なことを、企業で働いているとつい忘れてしまうのです。自分で選んでいる仕事、会社、職業。だからコミットするのです。さもなければ、自分を裏切ることになるからです。

  自律した人材、すなわち自律型人材は、プロフェッショナル人材と言い換えてもいいと思います。たとえば、経営コンサルタントは、会社に対して必ずしもロイヤリティは持っていなくとも、自分の役割やプロジェクトに対しては、強い職業倫理とコミットメントを持ちます。また、プロ中のプロである、プロスポーツ選手は、来季はひょっとしたら別のチームに移るかも知れなくても、今季はチームへの貢献に全身全霊でコミットします。

  最初の話しに戻すと、自律したら社員が辞める、と言う経営者や人事担当者に私はこう質問します、「じゃあ、今は辞めてないですか?」と。自律意識を持たせないように蓋をして、管理・服従をさせるようなマネジメントはもはや通用しません。人材市場は既に確立されており、情報は人材紹介会社やネットからいくらでも入手でき、いつでも転職することは可能なのです。それよりも経営者は、いかに自律した社員が働きたくなる、そして働き続けたくなるようなビジョンを示し、魅力的な会社にすることが、必要なのです。社内にいかに自律した人材を作るかです。彼らが新しい事業創造のために自ら主体的に動くのです。

  最後に自律したプロであるイチローの、あるインタビューでのコメントを引用します。

  「個人の総和としての力がチーム力なのであれば、まず選手個人ができることは自分の力を伸ばすために最大限の努力をすることであり、結果的に、チームとしての連携も含めた総合的なパフォーマンスも高まる。自律できていない人間のチームプレーという言葉は、馴れ合いを生むだけ」。




<小杉俊哉講師のコラム バックナンバー>

Vol.1 人材のマネジメントは「管理・服従」から「支援・自律」へ



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