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「企業を変える人材マネジメント」

小杉 俊哉(こすぎ としや)

(株)コーポレイト・ユニバーシティ・プラットフォーム代表取締役社長

1982年 早稲田大学法学部卒業。
1991年 マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院修士課程修了。
大学卒業後、日本電気株式会社(NEC)入社。
マッキンゼー・アンド・カンパニーインク、ユニデン株式会社人事総務部長、
アップルコンピュータ株式会社人事総務本部長を経て独立。

現在、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教授、
株式会社コーポレイト・ユニバーシティ・プラットフォーム代表取締役社長、
その他数社のベンチャー企業社外取締役を務める。


Vol. 6 動機付け その(2)


 今回も、動機付けについてお話ししたいと思います。動機付けの理論では、前回ご紹介したもののほかにハーズバーグの二要因理論が有名です。

 「仕事の不満足を促している要因を挙げてください」と言われたら、皆さんはどのようなものが頭に浮かびますか?「企業の方針」、「職場環境」、「給与」、「地位」、「雇用の保証」などではないでしょうか?これは、『衛生要因』と呼ばれ、仕事を不満足だと感じる69%がこの衛生要因によるととされています。

 一方、仕事の満足に貢献する要因はどのようなものでしょうか?「達成感」、「他社(他者)からの評価」、「承認されること」、「仕事内容」、「責任」などではないでしょうか?これらは、『動機付け要因』と呼ばれ、仕事に満足していると感じる81%がこれらの要因によるとされています。

 ここで重要なことは、『衛生要因』はあくまで不満足感を軽減するものであり、それらが満たされても、満足感を感じ難いということです。満足感を感じるには、『動機づけ要因』が満たされないとダメなんだということです。

 これは、誰もが知っているマズローの欲求五段階説と比較すると面白いです。

 1.生理的欲求(空腹、休養、睡眠など生命の維持)
 2.安全欲求(衣食住、危険の回避、安定した仕事)
 3.社会的欲求(集団への所属、友情・愛情)
 4.自尊欲求(承認、尊敬、独立)
 5.自己実現欲求(自己の成長や発展、自分がなすべきことをなす)

 人間は欠けているものを埋め合わせたいと願う、それは5つの段階に分かれ、一つが満たされるとより上位のものを満たしたいと願うというものです。

 ハーズバーグの言う『衛生要因』は、マズローの1、2、3の一部に該当します。また、『動機付け要因』は、3の一部、4、5に該当します。従って、仕事に満足感を感じ、より自身を成長させようとやる気をもってガンガン働くには、仲間から認められ、上司・会社からその存在を承認され、責任感をもって自分の成長につながるような実感をもてる状態であることが必要だということです。

 これには、大きな示唆があります。会社や上司としては、成果主義を導入し、目標設定をし、その達成度合いによって、昇給させ、地位を与え、さあこれでどうだ。これからは、もっともっと働いてくれ、と期待しても無駄だということです。

 ここに今だに大きな誤解があるようです。給与が少ない、地位が低い、と社員は不満足を感じます。しかし、それを与えたときには、不満足を解消・軽減できるだけで、やる気を醸成出来るわけではないということです。調査によると、単純作業就労者には賃金が動機につながりやすいそうです。しかし、知識労働者(ナレッジ・ワーカー)ほど、賃金では動かないということです。

 実は、かく言う私も、外資系企業の人事をやっていたときに痛い目に合ったことがあります。外国人ながら日本法人に入社したA氏は、学歴も高く、頭も良く、またコミュニケーション力にも優れ、直ぐに頭角を現し、数年で順調に等級を上げ、給与も伸びました。しかし、3年ほどすると、上司が本社に帰任する機に部門責任者の地位を求めて交渉してきました。私は、外部採用を進めており、そういう個人からの要求にいちいち応えているときりがないので、正しくプロセスを踏んだもの以外は認めない方針でやっていました。しかし、ありがちな話で、退職をちらつかせ、しまいには本社も取り込み、なんとか昇進させてくれという指示が来て、やむなく例外的に飲んだことがありました。年収も大幅増です。

 結果。まったく仕事をしなくなり、部門責任者という肩書きを手にして、1年もしないうちに退職していきました。

 では、次回はどう社員の動気付けに働きかけたらよいかを話したいと思います。  



<小杉俊哉講師のコラム バックナンバー>

Vol.5 動機付け その(1)
Vol.4 支援・自律 その(3) 〜支援型リーダーシップ
Vol.3 支援・自律 その(2) 〜会社の支援
Vol.2 支援・自律 その(1) 〜社員の自律
Vol.1 人材のマネジメントは「管理・服従」から「支援・自律」へ



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