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「子育てカウンセリングレポート」

山崎 雅保(やまざき まさやす)

心理健康ジャーナリスト/子どものふるさと研究所主宰

心理カウンセリング「ハートピット」所長。
心理セラピストとしてカウンセリングを担当する一方、
親子問題、教育問題、更には心の健康に関する執筆活動や
教育関連の団体での講演会を精力的に行う。
日経BPオンラインの『土壇場の夫学』を連載中。

豊富なカウンセリング経験に立脚した”現代社会人または子ども達を
取り巻く環境”についての講演は全国の教育関連担当者達の間でも好評。
子どものための歌ほか、自作曲によるコンサート活動も行っている。


Vol. 4 『わが子への愛とは』


『親であるなら、わが子なら愛せるのは当然のことだ。
わが子なのに愛せないだなんて理解できない。
親なら親としてわが子を愛せないなんてあり得ない。』

少しも迷うことなくそのように断言できてしまう人だとしたら、
その人はあまりにも人間味にかけています。人間の心への理解が浅はか過ぎます。
「自分の子どもなのに愛することができない」ことがある。それが人間という生き物です。そんな厄介な感情に惑うことがあるところにこそ、人間の人間たる所以(ゆえん)が潜んでいるのだとも思います。

子どもを愛せぬ悩み・苦しみのゆえにカウンセリングを求める母は少なくありません。多くの場合、その母である女性は第一子長女です。またその母である女性が「わが子なのに愛せない」のも第一子長女でありがちです。第一子長女として生まれ育った女性は、第一子長女として生まれてくれたわが子を愛せないがために苦しむ例が多いのです。

もちろん第一子長女ではない母であっても類似の悩み苦しみにさいなまれる場合はあります。愛せないわが子が第一子長女以外である場合もあります。
けれど「第一子長女である母が、第一子長女であるわが子を愛せない」という典型的な構図に注目すると「親として子どもを愛することができる・できない」にかかわる心のからくりが、とても分かりやすくなるのです。

「愛する」。それは崇高な感情だとされがちです。たしかに「愛」は崇高であり得るのでしょう。けれど通常の、日常における親子間の「愛」は、意外にもゲンキンな感情でもあるのです。その「ゲンキンな愛」という現実を無視したり置き去りにしたりしてしまうと「わが子を愛せない」感情はこじれを重ねてしまい、少なからぬ場合に「わが子を虐待せざるを得ない感情」にまで深刻化してしまいます。

母なら心の中に「愛の泉」を擁しているのが当たり前だ。そんな誤解が蔓延しています。
とんでもありません。「無限の愛が湧きいずる泉」など人間の心には存在しません。私たち人間は、たとえ母であろうとも「誰かや何かからいただいた愛」を、わが子や他の人々に手渡すことしかできません。
だからこそです。「お母さんからたっぷり愛をもらって育った女性」は、母となったときに、ごく自然に「わが子を愛せる母」になります。お母さんから手渡されて愛を、そのままわが子に手渡すことができるのです。
「お母さんからの愛が不足した中で育った女性」。そんな人、本当にいるのかい?、と首をかしげる向きもあるかと思います。

けれど現実には「お母さんからの愛が不足した中で育った女性」「愛し下手なお母さんに育てられてしまった女性」「愛することを拒否するお母さんに育てられてしまった女性」は、決して少数派ではありません。昨今の日本においては、多数派でさえあるようなのです。

第一子長女は、弟や妹が登場すれば「お姉ちゃん」と呼ばれがちですね。お姉ちゃんなんだから我慢しなさい。お姉ちゃんなんだからお母さんの都合を分かってちょうだい。
「お姉ちゃんなんだから」を枕詞に、どうしても譲らされがちだし、我慢させられる場面も増えてしまうのが第一子長女です。その分、子どもらしく甘え愛される機会が少なくなってしまいます。
要は弟妹に比べて愛されにくいまま育ってしまいがちなのが、第一子長女として生まれ育つ子の宿命でさえあるのです。

悲しいことに、悔しいことに、人間は「よい感情」のみならず「悪い感情」「不都合な感情」「厄介な感情」をも世代継承してしまいます。避けようとしても避けきれない世代継承は、ときとして悲劇をも招きます。
我慢ばかりさせられたお姉ちゃん。弟妹のゆえにお母さんの愛をもらうことに遠慮させられてしまったお姉ちゃん。第一子長女の心には悔しさ・悲しみ・イラ立ちが潜在しがちです。
悔しさ・悲しみ・イラ立ち。それは復讐やイジメのエネルギーになります。そのような形で放出しないと自分の心が保てなくなるのが人間です。だから我慢させられすぎたお姉ちゃんは弟妹に向けて憎悪をさえ向けることがあります。
そしてそのお姉ちゃんが母親となったときには、今度はもっとも愛しい存在であるわが子に、とくに第一子長女という存在に向けて憎悪がうずいてしまうのです。

わが子を愛せない悩み・苦しみ。それは「愛したい」と切望するからこその葛藤です。その葛藤にたどりついた母たちは、豊に愛せる母になろうと切望しながら苦闘を開始します。そしていつしか「愛満ちる母」へと変貌します。

私はカウンセラーという役割にいるからこそ、そんな素晴らしい母たちと出会い続けられています。人間ってのは、捨てたものじゃありません。




<山崎 雅保講師のコラム バックナンバー>

VOL.3 「救われた幼児」

VOL.2 「親としてもっとも大切な役割は」

VOL.1 「コミュニケーション力を失った子ども達」



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