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「子育てカウンセリングレポート」

山崎 雅保(やまざき まさやす)

心理健康ジャーナリスト/子どものふるさと研究所主宰

心理カウンセリング「ハートピット」所長。
心理セラピストとしてカウンセリングを担当する一方、
親子問題、教育問題、更には心の健康に関する執筆活動や
教育関連の団体での講演会を精力的に行う。
日経BPオンラインの『土壇場の夫学』を連載中。

豊富なカウンセリング経験に立脚した”現代社会人または子ども達を
取り巻く環境”についての講演は全国の教育関連担当者達の間でも好評。
子どものための歌ほか、自作曲によるコンサート活動も行っている。


Vol. 7 『不登校が気づかせてくれた母子の愛』


先日、前後して二つの集いに参加しました。
一つは「わが子の不登校を体験した・体験しているお母さんの集い」でした。もう一つは「思春期のわが子とのコミュニケーションを語り合う集い」でした。

みなさんは不思議に思うかもしれませんが「不登校のお母さんの集い」はとても和やかでした。語り合った後の私の気分も心地よいものでした。
他方で「思春期の親の集い」は、私の心に、少なからぬ「やり切れぬ思い」を残しました。

「やり切れぬ思い」の原因は「愛をはき違えているお母さん達の姿」です。親として子どもをどのように愛するかを誤解している。同時にわが子とコミュニケートする方法も、いくら説いても、本当には理解しようとしない。そんなお母さんの姿がとても目立っていました。

子どもを指導すること。躾すること。しっかり勉強させること。行動を制限すること。そうするのが親であり、子どもを愛することだ、と誤解しているお母さん達。彼女達は、指導や躾や勉強させることや行動の制限などを、親の思いのどおりにできないことについて「子どもとのコミュニケーションがうまくできない」と訴えました。

もちろんそんな誤解とは無縁で、子どもの自発性・自主性を大事に尊重できているお母さんの姿もありました。けれど「こんな気持ちで子どもと接し続けているなら、その子はしっかり自立できてゆくに違いない」と思えるお母さんの姿は少数派でした。

多数派のお母さん達は過保護過干渉を「愛」だと誤解していました。「こんな調子で子どもと接し続けていたら、子どもの心に、先々かなり厄介な問題が生じてしまうな。いや、すでに深刻な問題が生じているのに、それに気づけていないな」と思わされるお母さん達でした。

わずか2時間ほどの語らいではありました。けれどカウンセリングの場で多数の親子問題の推移を観察してきた私には分かります。「このお母さんの子は、こんな心理状態にあるはずだ。今後はこのような問題が表面化するだろう」と、これは経験豊富な心理カウンセラーならほぼ誰しもが、おおよそのところを推察できてしまうものなのです。

「不登校の集い」のお母さん達は「親として子どもを愛すること」をしっかり学ばされた方々、または今まさに学ばされている最中の方々ばかりです。だから「過保護過干渉は子どもの心の健やかな発達と充実を邪魔するだけだ」と思い知らされています。

かつては彼女たちも過保護過干渉の母でした。だからこそわが子が不登校のトンネルをくぐらざるを得なくなったと気づかされた彼女たちは、指導や躾や勉強や行動制限にとらわれるのは「愛を見失うに等しい」とも熟知させられました。「わが子を愛する」とは、母である己の心の奥行きと安定を深めながら、わが子の自発性・自主性の発露をひたすら待ちながら見守ることなのだと学ばされたのです。
そんなお母さん達の語り合いの場であったからこそ、私は心地よく過ごすことができたのです。

今は不登校であるわが子。かつての不登校のゆえに回り道したわが子。そんなわが子の様子を語りながら微笑むこともできる。親子ともども不登校を体験できたおかげで本当の意味での良好な親子関係を構築できたのだとも思える。わが子の不登校を経たがゆえに、あるいは経ているがゆえにもたらされた幸せを、穏やかに体感できているお母さん達の姿を、私は「よかったね」と思いながらながめることができました。

学力・学歴。不要だとはいいません。その子自身の自発性・自主性の上に立った勉学への意欲であれば「人生の豊か」を実現するための強力な武器になります。
けれど自発性・自主性を軽視されながら強いられた勉強は、大半の場合に子どもの人格を歪ませます。心理的に脆弱なまま社会に出ることにもなりがちであり、社会適応が困難な大人になってしまう場合も少なくありません。または社会適応はそれなりにできた形になるのだとしても、良好な夫婦関係を保てない、また親としての機能を発揮できない人にもなりがちです。

人として生きる。それは万物とコミュニケートすることです。この万物には、人間はもちろんのことあらゆる生命が含まれます。つまるところコミュニケーションスキルが優れている人こそが、この世を存分に生きられるのです。

親にとってのもっとも重要な役割。いうまでもなくわが子のコミュニケーションスキルを培うことです。コミュニケーションスキルの重要さに比べたら、学力や学歴は二の次以下の重要度でしかありません。勉学は、この世の万物とコミュニケートする手段のごく一部でしかないからです。

親がわが子のコミュニケーションスキルを培う手立ての土台。それはわが子の心に心を寄り添わせ、わが子の息遣いに耳を傾けることです。少なくとも「親が先に立ってアレコレ指導すること」ではありません。
「不登校のお母さん達」は、苦しい日々を過ごした末にそれを学んだ方々、学びつつある方々でした。
彼女達はラッキーなお母さん達です。昨今のこの社会を支配しがちな「大間違いしている子育て観」の呪縛から離脱できたのですから、とてもラッキーなお母さん達です。



<山崎 雅保講師のコラム バックナンバー>

VOL.6 「学力」
VOL.5 「予期されていた悲惨」
VOL.4 「わが子への愛とは」
VOL.3 「救われた幼児」

VOL.2 「親としてもっとも大切な役割は」

VOL.1 「コミュニケーション力を失った子ども達」



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