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「世界の戦場から平和を考える」

渡部 陽一(わたなべ よういち)

戦場カメラマン/フォトジャーナリスト

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。
静岡県立富士高等学校―明治学院大学法学部卒業。
戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、
世界の人々に伝えることに命をかけるジャーナリスト。

ルワンダ内戦、コンゴ紛争、ユーゴスラビア・コソボ紛争、ソマリア内戦、
パレスチナ内戦、コロンビア内戦、チェチェン紛争、イラク戦争など
世界情勢の流れのその瞬間に現場で取材を続ける。



Vol. 1 『戦場の小学校授業参観/学級崩壊どこ吹く風、アメと鞭の教育法』


「ズギューン、ズギューン、バン、バン、バン!」なぜ小学校の校庭で銃を乱射しているんだ!?
イラクバグダッドにある小学校の参観に出向いた。この小学校、朝一番の校内朝礼は空に向かってライフル銃の空砲を撃ち続けて、イラク国旗を掲揚すること。子供たちの耳に銃声の激音が突き刺さる。「なんという朝礼なんだ!」と一人おののいていると、生徒たちは何食わぬ表情で教室に戻り一時間目算数の授業の席に着いた。先生が教室に入ってくる。一気に緊張感が張りつめた。

日本で問題となっている学級崩壊。子供たちが欲望のままに行動して授業が成りたたなくなるという。その理由が語られるも学校側に不手際がある、家庭でのしつけの問題があると責任転嫁の繰り返しである。

それでは戦場の小学校には学級崩壊が無いのかというと、まさにその通りで学級崩壊という言葉さえ存在しない。
なぜか? 

授業を観ていて二つのことに気がついた。一つは先生の愛の鞭が頻繁に飛び交っていたこと。生徒たちが無駄話をしたり脇見をしていると、教壇から大人でも震えあがる怒声がとび、細長い棒切れでバシッとたしなめられる。痛みよりも先生の鬼の形相に生徒たちは恐怖し、決められた時間の授業を集中してこなしていく。

「やり過ぎでは?」と先生に問うとイラク人の先生曰く「生徒が悪いことをしたら正確にわかりやすく叱ることが大切です。子供たちも何故怒られたのかすぐに気がつきます。もちろん皆素直でいい子たちばかりですよ。」

もう一つは、生徒たちがとにかく手を挙げて発表を率先してしたがること。これには本当に驚いた。恥ずかしがるという感覚がなく、答えが合っていようといまいと関係なく自分の意見を次々に述べていた。席から立ち上がって頼むから自分を指してくれと先生に訴えていた。そして先生は発表した生徒をとにかく褒めあげていた。ここではじめて納得した。鬼の形相の先生がいて生徒を褒めちぎる天使の先生が教壇にいる。このわかりやすい教鞭が子供たちの心を掴んで話さないのだろう。ここでは学級崩壊がないかわりに緊張と興奮、喜びに満ちた授業がかわされていた。

子どもたちは学校が終わり門を出ると、今度はパトロールしているアメリカ軍兵士と戯れていた。戦場ならではの光景を目にしながら改めてイラクの小学校の教育手法に頭が下がり、喝采を送る思いであった。

 
渡部陽一
 
渡部陽一
 






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