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「心が通うコミュニケーション」

鈴木 みどり(すずき みどり)

親業訓練協会シニアインストラクター

1993年 親業訓練協会インストラクターの資格を取得。
講演講座の活動状況を、当協会特別顧問近藤千恵氏に認められ、
トレーナーとして、当協会養成講座に関わるようになる。
その後、教師学基礎講座保育編インストラクターや
親業訓練協会シニアインストラクター、
教師学一般講座インストラクター資格の資格を取得。
また、日本心理カウンセラー学院 心理カウンセラーとして認定される。
親業訓練協会シニアインストラクターとして個人的な活動を続けると同時に
養成講座トレーナーとして数百名を超えるインストラクターに指導を続ける。




Vol. 6 『親と子のコミュニケーションを考える(6)』


今回も「サイン」について、事例を見ながら、ご一緒に考えていきましょう。

不登校をしている中学生の息子は、昼になると自転車で出かけます。
帰宅後、自転車はガレージに片付ける約束になっているのですが、
夜になるまで玄関前に出したままです。
自転車が玄関前にあることを母親は「イヤだ」と感じています。
人や車の通行の邪魔になるし、出しっぱなしというだらしなさも感じています。
自転車についてしょっちゅう注意をするのですが、
それでも息子は夜になるまでガレージには片付けません。
母親は『へんだな、なぜ玄関前に?』とは思うのですが、
いつもいつも、自転車を片づけさせることに躍起になってしまいます。
そんなことが、もう何年も続いています。
その頃、母親は親業訓練講座を受け始め、サインのことや、能動的な聞き方を学びます。

ある日、息子は玄関前に置いてある自転車をみながら、こんなことをつぶやきました。

子 だれも遊びに来てくれないな(寂しそうな顔)・・・
母 誰か遊びに来るといいなって思うのね〔能動的な聞き方〕
子 ・・・自転車に気がつかないのかな・・・
母 あ、自転車・・・自分が家にいることをお友達に気づいて欲しかったのね〔能動的な聞き方〕
子 ・・・・・・無理だよね・・・・・・・

母親は能動的な聞き方をしたことで、初めて『玄関前の自転車の理由』を知りました。

翌日から自転車は、使った後すぐにガレージに片付けられるようになります。
そして数日後、息子は自分から進んで友人の家に尋ねていくのです。
不登校をはじめて3年目のことです。
懐かしい友人達と3年ぶりに遊んだその夜、息子の顔は輝いていました。
さらに数ヶ月後、友人達の協力を得ながら、彼の登校が始まります。

この事例では息子の言葉から、二つのサインを見ることが出来ます。
一つ目は、「だれも遊びに来てくれない」という言葉と、その時の寂しそうな顔です。
『誰とも遊べない寂しさ』をはっきり受け取ることが出来ますね。
二つ目は「自転車に気がつかないのかな」の言葉です。
『友人が遊びに来ることを期待して自分の行っていることの虚しさ』を感じていることがわかります。
親が子どもの行動からサインを受け取ったときに、能動的な聞き方をすることで、子どもは自分が
抱えている悩みや寂しさを、はっきり認識し、自分で解決するために思考を広げていきます。
その結果、彼は数日後、自分から友人の家を尋ねていくことにするのです。

悩みのサインはいつも言葉でわかりやすく表現されるとは限りません。
親業を学んでいなければ『玄関前の自転車』をなぜ?と思いながらも、
それをサインと気づかないのは自然なことです。
サインをキャッチする親のアンテナ磨きの方法を具体的に学ぶことで、
親は子どものサインに敏感になり、悩みのサインを見つけやすくなります。

この息子の場合、友人に『僕は家にいるよ』と知らせたいために何年も前から玄関前に自転車を
置いていたのです。そして日々、気づいてもらえない寂しさを抱えていたのかもしれません。
同時に毎日母親からは「片付けなさい」と叱られ続けていたのです。

友人恋しさの想いを自転車に託し、その自転車が原因で母親から毎日叱られる。

親が子どもを叱るのは、きちんとした生活が出来るようになって欲しいという親の願いが
あるからこそです。生活ルールを子どもに教えるのは親として欠かせない役割です。
親の役割を果たそうとするからこそ、アンテナを錆び付かせることになる。
この矛盾を解消する方法がゴードンメソッド(親業)にあります。

「こころが通うコミュニケーション」のキーポイントはアンテナ磨き! 
表面的な言葉のやり取りだけを、テクニックのように真似した場合、
かえって親子供に不要な混乱が生じることになります。
そのことをどうか心に留めておいて頂きたい・・・それが私の願いです。

※能動的な聞き方についてはコラム(3)(4)でご紹介しています。

 


<鈴木 みどり講師のコラム バックナンバー>

VOL.5 「親と子のコミュニケーションを考える(5)」
VOL.4 「親と子のコミュニケーションを考える(4)」
VOL.3 「親と子のコミュニケーションを考える(3)」
VOL.2 「親と子のコミュニケーションを考える(2)」
VOL.1 「親と子のコミュニケーションを考える(1)」




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