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川村 透のコラム「もののみかたを変えてみませんか?」
川村 透
川村 透(かわむら とおる)
新しいものの見方提案/モチベーティブ・スピーカー/自信の湧く講師

外資系コンサルティング会社に7年勤務。「自分にしかできないことをやってみよう」と退職し、2000年7月に独立。現在は、「もののみかた」「モチベーション」を切り口とした講演やセミナー、本の翻訳および執筆活動に日夜奮闘中。

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Vol. 15 『感動』
(2008年12月05日)
先日、とあるIT企業での一日研修がありました。テーマはヒューマンスキルのアップです。通常、研修では、何らかのスキル、ノウハウを伝えようとすることが多いのですが、今回は事前の打ち合わせから、この会社に必要なものはなんだろうとキーワードを探していった結果、それは、「人と人とのつながり」「お互いを認める」「感謝」という言葉でした。
日々、成果主義や人員減により、ますます人が孤立化し、人のことなど構ってられない状況の中、少しでも誰かを承認したり、感謝の意を伝えるという文化が根付けば、会社の雰囲気が変わるだろうと思ったのです。そこで、研修の最後に、おそらくふだん、最も承認できない相手、つまり上司への手紙を皆で書こう、という企画を立てました。

研修の後半、少し「承認」のワークをやったあとに、
「では、皆さん、自分の上司を承認するという意味で、手紙を書きましょう」
というと、一同「えーっ」と驚きの表情。
が、同じ上司を持つ仲間がグループになり、便箋が配られると、だんたん真剣モードに顔が変わっていきます。下書きをきちんとするチーム、「泣かせてやろう」「ここでオチをひとつ入れよう」など議論するチーム・・・結局30分かかり、ようやく手紙が書きあがりました。

さて、いよいよ上司の入場。彼らにはただ、部下と討論会をする、とだけしか伝えていないので、皆、何がはじまるのかとけげんそうな顔。「今日は、普段の感謝の気持ちをこめて、皆で手紙を書きました」というと、皆さんの表情に一瞬、驚きが。

まずトップバッター。チームの代表が前にたち、さきほどしたためた文章を読み上げます。
「○○部長・・・」
ふと上司の顔をみると、みるみるふだんの仕事モードから、やさしい男の人の顔に変わっていくのがわかります。
「いつも見ていてくださって、本当にありがとうございます。おかげで安心して仕事ができます」
参加者を見渡すと、皆、上司がどんな顔をするのかと興味津々・・・・なかにはじーんと感動し、目にうっすら涙を浮かべている女性も。
横で見ていた僕も、思わずこみ上げてくるものがありました。その場に、とてもあたたかい空気が流れたのを感じました。人を認める、認められるっていうのは、本当にその場の雰囲気を変えるのですね。
やがて手紙を読み終え、上司からひとこと。
「いままでこんな手紙をもらったことはなかったので、いや、感激です・・・」
「女性から手紙をもらうなんて、何十年ぶりで・・・」
「貼っておきます」
みな照れながらも、とても喜んでいました。その顔をみたとき、「ああこの企画、やってよかった」と心から思いました。

研修が終わって。
研修で、涙がこみ上げてきたのは、久しぶりでした。いや、こういう人の琴線にふれる研修っていいです。今回の研修をきっかけに、お互いで承認しあったり、感謝しあう文化が、少しでも根付けばいいなと思いました。

働く人には、もちろんお金、という報酬は大事です。そして、それと同じくらい、人から認められる、誉められるという体験は、人にとって価値ある報酬であると思います。
人は誰しも心の中に、あったかいものが流れているはず。それを信じてあげることって、大事ですね。

皆さんの会社でもいかがですか。「上司への手紙」―社内の何かが、きっと変わり出すはずです。


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