川村 透のコラム「もののみかたを変えてみませんか?」
川村 透(かわむら とおる)
新しいものの見方提案/モチベーティブ・スピーカー/自信の湧く講師
外資系コンサルティング会社に7年勤務。「自分にしかできないことをやってみよう」と退職し、2000年7月に独立。現在は、「もののみかた」「モチベーション」を切り口とした講演やセミナー、本の翻訳および執筆活動に日夜奮闘中。
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Vol. 17 『コタの車いす』
(2009年02月05日)
大晦日が迫るある日の朝。僕のパートナーが飼っている5歳♂のダックス、小太郎の様子がおかしいのです。昨晩まで歩いていたのに、朝起きてみると、空の一点を見つめたまま動かない。急遽近くの動物病院に駆け込むと、診断は椎間板ヘルニア。すぐに手術となり、一週間入院の後、引き取りにいった病院での姿は、背中には痛々しい傷、後ろ足はべたっと伸びてやせ細り、おしっこは垂れ流し状態。
「コタ...」
ふだん四つ足で自由に歩き回っている犬が、後ろ足がきかなくなるということは、こうもせつないことでしょうか。それでも後ろ足をひきずって懸命に歩こうとする姿をみるたび、涙が出てきました。
「でも歩けないと決まったわけじゃないから、希望を捨てずがんばろうよ」
パートナーを励ますものの、心の中では最悪の事態を想定していました。もし歩けなくても、最低限自分でおしっこができ、家の中で這って生活できればと。その覚悟は決めていました。で、まずはリハビリ用の犬の車椅子がないかとネットで探したのですが、その中で、軽そうで価格もリーズナブルなものを作っている銀父(ぎんちち)さんという方を発見。場所も都内で近かったので、すぐに会いにいくことにしました。
さっそくコタの様子をみせると
「これならひょっとしたら歩けるようになりますよ。病院で歩けないって言われても、車椅子に載せてだんだん歩けるようになる子もたくさんいますから」
そんな銀父さんの言葉に励まされ、その日は寸法を測って帰りました。彼はふだんは障害者用の装具などを作っていて、週末に犬の車椅子を作っているとのことでした。
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一週間後。待ちに待った車椅子が完成です。さっそく待ち合わせのカフェで、できてきた車椅子にコタを載せてみました。足をリングに通し、バックルで留めれば完了。コタは最初「ん、なんだこれは?」となれない装具にとまどっているようで固まっています。さて、本当に歩けるだろうか。少しはなれて、コタを呼んでみました。

「コタ、カム!」
おそるおそる一歩前に踏み出すコタ。するといままでは後ろ足を引きずっていたのですが、今度は車輪が回るのでスムーズについてくる。そして後ろ足は、地面につくかつかないかの絶妙な高さに調整してあるので、自分で蹴ろうと足が動いています。
「ほら見て!動いてる!足が動いてるよ」
コタは、ゆっくりと、こちらへ歩いてきます。自分の力で、しっかりと。
「コタが歩いてる!自分で歩いてる!」
僕はもうその姿を見て号泣です。だって、歩けないと思っていたコタが、自分の力で歩いてるんですから。
これでもう、ほかの犬と一緒にお散歩もできる。よかったね、コタ。コタも嬉しそうに尻尾を振っていました。
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僕は思います。今回のように、相手が涙を流して喜んでくれるような仕事が自分にはできているだろうか、と。
やっている仕事はもちろん違いますが、今回の一件で、ふだん忘れかけていた大切なことに気づくことができました。人に喜んでもらえるって、本当に素敵なことだなあ。そしてなぜか、感謝されるほうだけじゃなく、感謝するほうも嬉しいから不思議です。
銀父さん、本当にありがとうございました。