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藤田 正美のコラム「今を読み、明日に備える」
藤田 正美
藤田 正美(ふじた まさよし)
元ニューズウィーク日本版 編集長

東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社で経済記者を14年勤めた後、ニューズウィーク日本版創刊に参加。1994年から2000年まで7年間、同誌編集長、2001年より同誌編集主幹。2004年に退社し、現在フリージャーナリストとして活動。

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Vol. 56 『続・日本の形』
(2009年12月04日)

初めての試みである事業仕分けが終わった。予算査定の過程が公開されたことには大きな意味があると思う。官僚の論理だけで決まっていたような話が公開されたことで、いかにも説得力のない説明やら、国がやる必要のない事業がかくもたくさんあるということが国民の眼にさらされたからである。

それと同時に、いったいこれまで政治家(つまりは国民の選良である)は何をやってきたのかということも改めて気になった。国民生活のためにというのが政治家の口癖だが、少しでも予算を有効に使おうという気があれば、もっと細かく目を通してこなければならなかったはずである。民主党政権になって政務三役が置かれ、副大臣やら政務官が仕事をしている様子がよく報道されたが、官僚が「政治家が仕事をしているのを初めて見た」と語っていたというのが印象に残った。自民党の政治家は、猟官運動には熱心でも、国民の代表として仕事をするのにはあまり熱心ではなかったということだろう。

それだけでも政権交代の意味があったというべきかもしれないが、鳩山政権にとっては、事業仕分けの成果を得々と語っている場合ではない。何といっても日本経済の状況がどうも予想よりもかなり厳しそうだからである。まずはデフレ、そして円高である。

円高は、円が買われているというよりはドルやユーロが売られているというほうがより実態に近いかもしれない。アメリカの超金融緩和が長引きそうだということ、そしてドバイのバブルが弾けたこと。こうしたことからとりあえず円に乗り換えておこうということなのだろう。

しかし日本の輸出産業にとっては大打撃である。昨年までの数年の円安バブルで輸出産業の収益が大幅に向上した。それとまったく逆のことがこれから起こってくる。内需がとりあえずの景気刺激策、エコポイントやエコカー減税などで上向いているとはいえ、ボーナスの減少や就労人口の減少などを考えれば、消費そのものが上向くとは考えにくい。しかも日本経済そのものは少子化と人口減少という構造的な問題を抱えている。

とすれば、とにかくデフレが脱却するためには政府が支出を増やすしかあるまい。問題は、二つある。GDPの2倍近い借金を抱えていてさらに借りることができるのか(将来に負担を残すかどうかではなくて、市場が借りることを許してくれるのかどうかということである)。もう一つは、国債を発行できたとしてそのカネを何に使うかである。

ケインジアン的な考え方で行けば、道路に穴を掘ってそれを埋めるだけでも経済効果があるということだろうが、潤沢にカネがない以上、波及効果のないような使い方はあまりにも芸がない。実際、1990年代にあれほどの借金をしてあれほどカネを使ったのに、景気回復の足取りはあまりにも重く、デフレの重圧が日本経済に重くのしかかった。要するに、「アニメの殿堂」では日本経済のカンフル剤にはならないということである。

その意味では、鳩山政権の「コンクリートから人へ」というスローガンは正しいかもしれない。問題は財源である。財源を他からひねり出すことも重要だろうが、ここはむしろ国債増発による財源確保ということも選択肢として考えたほうがいいかもしれない。国内的には反発が強いとは思うが、もしここで日本の経済が深い二番底に陥るようなことになれば、そこから脱却するのにもっと大きなコストを支払うことになるだろうと思う。

毒をもって毒を制するのか、角を矯めて牛を殺すようなことになるのか。鳩山政権の最初の正念場である。




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