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藤田 正美のコラム「今を読み、明日に備える」
藤田 正美
藤田 正美(ふじた まさよし)
元ニューズウィーク日本版 編集長

東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社で経済記者を14年勤めた後、ニューズウィーク日本版創刊に参加。1994年から2000年まで7年間、同誌編集長、2001年より同誌編集主幹。2004年に退社し、現在フリージャーナリストとして活動。

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Vol. 60 『政治の混沌が影を落とす』
(2010年04月05日)

日本経済の足元はやや明るくなっているとはいえ、まだまだ先行きの不透明感は残っている。要因はいくつかあると思うが、ひとつは政治の混乱だ。まずは鳩山政権。支持率の低下に歯止めがかからない。未だに結論が見えない普天間問題。そして郵政民営化見直しのドタバタ。首相の指導力と小沢幹事長の強引な党運営が有権者に嫌気をもたらしている。

政権党だけではない。自民党も「解党的出直し」どころか「解党」そのものになりつつある。先に鳩山邦夫元総務相が離党。与謝野元財務相、園田元幹事長代理、藤井元運輸相が平沼元通産相と合流して新党を結成する。舛添元厚生労働相も自民党に残るか、離党して新党を結成するか、あるいは平沼・与謝野新党と合流するか、損得勘定をしているに違いない。

政権の座を失った自民党が、こうも早く瓦解するとは思わなかった。予算配分というテコがなくなったために、次に自分が当選できるかどうかわからなくなったことが大きいのだろうと思う。しかしこれは国民にとっては迷惑な話だ。民主党を政権の座につけたのは、それによって二大政党制ができるかもしれないと期待していたからである。とくに無党派層はそう思っていたはずだ。それなのに自民党が無力化してしまえば、有権者の選択肢がなくなってしまう。

見方を変えれば、自民党にしても民主党にしても、どのような社会を築きたいのかという理念が今ひとつ見えないのだから、ここでガラガラポンをしたほうが将来のためにはいいのかもしれない。ただ気になるのは、時間があまり残されていないということだ。

足元の景気がいくらか上向いているとは言っても、需給ギャップはいまだに30兆円を超えるとされる。生産能力はまだ大きすぎるし、消費能力は足りないということだ。このギャップが残るかぎり、日本がデフレ状況から脱出するのは難しい。企業が「価格決定力」を取り戻すことができず、その結果、収益力は本格的に回復せず、人件費の抑制、投資の抑制が続くからである。

こうした国内の状況に対する危機感から、キリンとサントリー、あるいは高島屋とH2Oの経営統合という構想が出てきたはずだった。しかしどういうわけか、最近は相次いで破談となっている。そして記者会見などで言われるのは、社風の違い、あるいは経営戦略の違いといった理由である。

でもちょっと待ってほしい。社風や戦略の相違があることはつとに承知していたはず。それでも、成長が望めない国内市場でどう生き残るか、あるいは海外にどう打って出るか、という目的のために、両者の違いを乗り越えて経営統合という話だったはずである。その危機感が薄れているということなのだろうか。経営統合でいちばん問題になる合併比率で、お互いが自分が有利になるように主張しつづければ当然話はまとまらない。

どうも対中輸出を始め、輸出が伸び始め、今年の秋には本格回復という見通しが強まっていることで、このままでも何とかなるという気分に変わってきたのだろうか。大げさな言い方をすればそれは幻想である。たとえば少子高齢化、人口減少。これは世界的な傾向であるが、これほど急速に進む国は日本をおいてない。そういった「市場の構造変化」があるのに、世界的な市場で活躍できる日本企業は増えているわけではない。むしろ減っているようにさえ見える。

基本的に年功序列にとらわれている日本の大企業では、世界市場で丁々発止と戦えるリーダーを抜擢することは難しい。平沼・与謝野新党の平均年齢がほぼ70歳ということが、この新党に期待しないという回答が多いことにつながっている。これを反面教師とすれば、経済界は若いリーダーに将来の希望を託す必要があるだろうと思う。

そうなってくると、日本の将来は恐らく若き起業家たちがどう動くかに大きく影響されると思う。日本という社会は、こうした起業家に決して優しい国ではない。若者が起業するのを促進する政策。郵貯の限度額を倍にすることより、こちらのほうがよほど急がれる政策だと思うが、いかがだろうか。




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