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藤田 正美のコラム「今を読み、明日に備える」
藤田 正美
藤田 正美(ふじた まさよし)
元ニューズウィーク日本版 編集長

東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社で経済記者を14年勤めた後、ニューズウィーク日本版創刊に参加。1994年から2000年まで7年間、同誌編集長、2001年より同誌編集主幹。2004年に退社し、現在フリージャーナリストとして活動。

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Vol. 61 『日本の企業よ』
(2010年04月30日)

日本はいったいどのような国になろうとしているのだろうか。というより、日本はいったいどのような問題を抱えているのだろうか。

周りを見回してみると、日本が大げさにいえば「見捨てられている」状況がよくわかる。ファンドに日本の銘柄を組み入れないように要求されるマネージャー。北京では大盛況のモーターショー。しかし昨年秋に開かれた東京モーターショーには海外メーカーはわずか3社しか出品しなかった。現代自動車などは、キャンセル料を支払ってでも出品を取り止めた。自動車市場はピーク時よりも30%以上も減っているのだから当然といえば当然である。

東京に支局を置いていた海外のメディアは、どんどん撤退している。日本のニュースバリューがなくなって、かつ支局を置くコストが高いということになれば、当然である。浮いた分で中国やインドの支局を増やすほうがずっと生産性が高い。

それでもまだ保険業にとっては日本の市場は魅力があるのだという。何といっても勤勉な日本人は1400兆円(ネットでも1000兆円)という金融資産を保有している。この資金を引き出せる見込みがある限り、海外の金融機関は日本に拠点を構えるだろう。郵貯や簡保の限度額引き上げは、消費者のカネの奪い合いと見えなくもない。

一方で、日本への直接投資は相変わらず伸びないようだ。日本で改めて投資をして、生産をしようという海外の企業はどう考えても多くはあるまい。日本企業を買うとか、工場を買うとかいうことは、技術が欲しい場合はありそうだ。実際、自動車ボディ用金型メーカー、オギハラの国内工場を中国企業が買収したという例がある。

経営者と話をしていると、物づくりならまだ負けないという自信を感じることがよくある。でも果たして日本は負けないのだろうか。もともと日本の製造業はなぜ輝かしい成功を収めてきたのか。それは開発力というよりも、いかにして精度の高い部品を効率的に作るかということに心血を注いできたからであるように思える。

トヨタのカンバン方式に代表される徹底した在庫の圧縮。工場の随所に見られる細かい工夫。世界的なベアリング工場でも簡単なジグを作ることで世界最高の精度を出していた。そうした工夫の積み重ねが日本の製造業を育てたのである。

いまそれと同じことを中国やインドの企業が始めている。彼らのイノベーションである。それはわれわれ「先進国」とはまったく違った発想で行われる。代表的には、インド、タタ自動車が開発した世界で最も安い車ナノだ。これを「安い車」と馬鹿にしてはいけない。ホンダだって最初は自転車にモーターをつけて売っていた。タタがやがて世界の自動車市場のうちいちばん価格の安い市場、いわゆるBOP(ボトム・オブ・ピラミッド)を押さえるメーカーになるかもしれない。

日本のメーカーが「品質の高いものは価格も高いのが当然」と思っているうちに、新興国のメーカーにどんどん挑まれる。そして日本のメーカーが駆逐されてしまうこと可能性だってない話ではない。かつてアメリカのテレビメーカーは、日本のメーカーに駆逐されたのである。そしてインドや中国のメーカーの技術革新は思った以上のスピードで進んでいると言われている。

それでは日本のメーカーは何をなすべきなのか。おそらくいちばん重要なのは、研究開発である。これも新興国にどんどん研究設備を置く世界的企業が増えていることを思えば、よほど本腰を据えてやらない限り、優位を保つことは難しい。もちろん国が支援する政策も必要である。

次は、商品のアイディアである。いい例が、アメリカのアップルだ。コンピュータ業界で生き残ることが難しいと言われたアップルがよみがえったのは、商品力のおかげだ。スケルトンで世界をあっと言わせたiMacから、iPod、iPhoneそしてiPadと続々とヒット作を送り出した。目新しい技術ではなくても、それを組み合わせることが新しい商品を生み出せる。そして人々のライフスタイルを変えていく。かつては日本のソニーがそういう役割を担っていたと思う。

日本のメーカーが作る側の目線ではなく、消費者目線で本格的に開発しはじめれば、日本から次のアップルを生み出すこともありえない話ではないと思う。




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