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岡田 晃のコラム「今後の日本経済-岡田晃の視点」
岡田 晃
岡田 晃(おかだ あきら)
大阪経済大学客員教授

日本経済新聞社入社。記者を経て、テレビ東京へ異動し、「ワールドビジネスサテライト」のプロデューサー、テレビ東京アメリカ社長、テレビ東京解説委員長等を務める。経済評論家として独立し、現在は、テレビ等で世界経済や日本経済の解説者として活躍中。

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Vol. 1 『ギリシャ危機から読み取るものは?』
(2010年07月09日)

米国の景気鈍化が株安・ユーロ安を加速

 ギリシャ危機による世界経済の動揺が収まらない。4月下旬に深刻化したギリシャ危機は欧州など各国による支援策が固まったことなどから、一時は市場もやや小康気味となっていたが、6月末から7月にかけて再び世界的に株安が進んだ。NYダウや日経平均株価などは今年の安値をつけ、為替相場ではユーロ安が一段と進んで、そのあおりでさらに円高となった。一体、何があったのか?
 6月下旬以降に株安となった理由の第1は、ギリシャ危機の影響が欧州にとどまらず、米国や中国の実体経済にも及んできたのではないかという懸念が急速に広がったことだ。米国では7月初旬に発表された重要な経済指標が軒並み予想を下回った。まず、6月のISM製造業景況感指数は56.2と、前月より3.5ポイント低下した。この指数は景気動向を敏感に反映するといわれているもので、2ヶ月連続の低下となった。続いて新車販売台数。6月は前年同月比14%増となり、回復ペースは大幅に鈍化した。そして3つ目が6月の雇用統計だ。市場が注目する非農業部門雇用者数は前月に比べ12万5000人減った。減少は半年ぶり。これらはいずれも「悪化」とは言えないが、景気回復の鈍化と見ることが出来る。
 米国の景気は昨年春ごろに底を打ち、その後は緩やかながら回復を続けている。回復の遅れていた雇用も今年に入って改善に転じ、米国は先進国の中では最も景気回復が進んでいると見られていた。それだけに、これらの指標が一斉に悪化したことはショックを与えた。また同じ時期に発表された中国の景気指標が悪かったことも、世界経済の悪化という懸念を加速させた。今後、ギリシャ危機→欧州景気悪化→世界経済悪化という影響がどの程度広がるのか、注視する必要がある。

「性急な財政再建」に懸念

 もう一つの株安の理由は、見過ごされているが、実は6月20日のG20首脳会議の合意にある。G20では財政再建問題が最大のテーマとなり、首脳宣言では「日本を除く先進国が2013年までに財政赤字を半減させる」との方針を盛り込んだ。ギリシャに限らず、どの国もリーマン・ショックによって財政出動した結果、財政赤字が深刻化していることを考えれば、G20が財政再建の国際的な目標を打ち出したことは評価されるのが自然だろう。ところが、株価はその直後から下落を始めたのである。NYダウの動きをよく見ると、G20直前の6月18日には1万450㌦まで回復していたのが、G20後の21日以降はほとんど連日のように下げが続いた。独立記念日前の7月2日には9686㌦まで下げ、9ヶ月ぶりの安値水準に逆戻りしてしまった。
 つまりこれは、財政再建目標が評価されたわけではないのだ。筆者はむしろ、性急な財政再建計画への懸念が背景にあると分析する。財政再建が必要なことはもちろんだが、「3年で財政赤字半減」というG20の方針はやや性急過ぎないか。景気が回復してきたとは言ってもまだ不安定な状況の中で、財政再建を急ぎすぎると景気回復自体をダメにする恐れがある。G20は「経済成長に配慮した財形健全化計画」との表現を使っているものの、市場はリスクを意識しているのではないかと思う。

歴史の教訓に学べ

 実際、過去にそのような例は数多くある。その代表例が大恐慌時代の米国だ。大恐慌については、今回の金融危機との関係で引き合いに出されることが多く、F・ルーズベルト大統領のニューディール政策によって不況から立ち直ったことは広く知られている。たしかに同大統領が1933の就任直後から実施した大規模な財政出動は功を奏し、景気は回復していった。株価(NYダウ)も50㌦足らずまで落ち込んでいた水準から37年には200㌦近くまで回復、米国経済は立ち直ったかに見えた。そこでルーズベルト政権は景気対策で拡大した財政赤字を削減するため、1937年に増税に踏み切った。ところがその結果、株価は再び暴落し、実質GDPはマイナス成長に逆戻りした。これは「37年恐慌」と呼ばれている。米国経済の本格回復は第二次世界大戦終了後になってからのことである。それほど、37年恐慌が米国経済に残した傷は大きかったのだ。
 このことは、財政再建を急ぎすぎることの怖さを教えてくれている。日本でも、1997年消費税引き上げがその一例として挙げられる。このときも、バブル崩壊後の不況から脱して景気回復が続いていたとは言っても、本格的に立ち直ったとは言えない状態だった。しかしバブル崩壊後の景気対策で財政赤字が膨らんだことから、橋本内閣は財政再建を掲げて消費税を引き上げた。だがそれが一因となって、97年から再び景気が悪化し、その年から翌年にかけて山一証券など大手金融機関の破綻へとつながっていったのだった。
 このようにしてみると、性急な財政再建が景気に与える打撃はかなり致命的になる場合があることを認識しておく必要がある。もちろん財政再建は成し遂げなければならないが、景気に打撃を与えずにいかにして財政再建を図るか、これに知恵を絞る必要がある。現在も、参院選で消費税問題が大きな争点となっている。これについては、別の機会に論じるつもりだが、少なくとも性急な増税によって景気を悪化させることだけは繰り返してはならない。




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