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奥村 幸治のコラム「目標達成のセルフマネジメント」
奥村 幸治
奥村 幸治(おくむら こうじ)
パーソナルトレーナー

1994年イチロー選手の専属打撃投手を務め"イチローの恋人"としてマスコミに紹介され、話題の人となる。現在 パーソナルトレーナーの傍ら、少年野球チームの監督、NPO法人ベースボールスピリッツの理事を務める。

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Vol. 3 『スランプの時に何をするか』
(2008年06月15日)
今年新人王を獲得した楽天のマー君(田中将大投手)は、
"僕が監督する少年野球チームの生徒の一人でした。
マー君は、プロに入ってからも、何かあると度々連絡をくれます。

今年、楽天が2勝目をあげた時のこと。
この日のマー君の投球は、普段投げる自分のボール
"ストレート、スライダー、フォークボール"が中心ではなく、
"ツーシーム"というボールを多く投げ、
大人のピッチングだとマスコミにも評価されました。

本人のコメントでも『ツーシームが・・・』というコメントを多く話していましたが、
その日、僕がマー君に電話で話したことは、
『自分本来のピッチング、目指すべきピッチングを忘れたらあかんぞ。』
ということです。
相手打者から見たマー君の姿は、ストレート、スライダー、フォークボール。
このボールを攻略しないと、
マー君は攻略できないと思うのが相手の心理であって、
その他のボールでは、一時的に結果を出せても、
次の登板ではどうかわかりません。

これは、イチロー選手から学んだ事の一つですが、
本当に継続できる真の力をつけていくこと、
今、苦しくても、ひとつのことをやり続けることで、
先の未来、良い結果に繋がるのです。

それから電話で、イチロー選手のこんなエピソードをマー君に話しました。

ある日のこと。
「調子が悪くなると、フォームを変える選手」の姿を見て、
イチロー選手がこんな事を言っていたことがあります。

『あの選手、今はフォームを変えて打てるかもしれません。
でも、打てなくなると、また、もとのフォームに戻りますよ。
小さい頃から自分が積み上げたフォームでプロの選手になったんだから、
そのフォームで工夫をするのなら分かるのですが、今までやってきていたことが
まったく活きてこないフォームにしても結果は出ないはずです。』

そのフォームを変えていた選手、イチロー選手の話の通り、
元のフォームに戻りました。

これはどういうことかと言うと、イチロー選手は、
その時の【心】、【考え方】が大切だと言っているのです。
調子が悪くなると人は苦しくなるもの。
その時、自分がやるべきことをしっかりと考えずに、
闇雲に自分のやり方を変えることをして一時的に運良く結果が伴うと
不安がごまかされたりします。しかしそれは一時的なものなのです。
心、考え方をしっかり持ち、自分のやるべきものをやり続けることが、
先の未来、良い結果を生むということをイチロー選手は知っていたのです。

何より強い心を持つことが必要なのだということを、僕はあとから気づきました。

メジャーで活躍した野茂選手の例もあります。
野茂さんはストレートとフォークボールがあり、
どちらかの調子が悪いと必ず結果が悪くなり、
勝つときは野茂さんの勝つ形、ストレートとフォークボールの調子が良い日です。
そのボールへのこだわりが野茂さんを支えていました。

さて、継続すると一重に言っても、どんな人にもスランプは訪れるものです。
それは、210安打を打ったイチロー選手も例外ではありません。
しかしその時の考え方こそ、イチロー選手の凄さでした。

調子が悪くなればなるほど、結果が欲しくなり、その状態を少しでも早く脱出したい。
そのため、より多くの練習をしようと人は考えます。この考え方は僕もそうですが、
イチロー選手以外のほとんどの選手は、そう考えるでしょう。

当時、毎日打撃投手をしていた僕には、(当時オリックスの)主力選手の調子の
良い日、悪い日がよく分かりました。

その時、『投げましょうか?』と声をかけると、
ほとんどの選手が、『お願いしてもいいか。』という答えが返ってくる。
これが人の心理です。

しかし、イチロー選手は、調子が悪いときに
『投げようか?』と声をかけても
『いらないです。』という一言が返ってきます。

イチロー選手に後で理由を聞くと、
『疲れすぎてバットが振れなくなるのがダメなんですよ。』
と、答えてくれました。イチロー選手が20才の時です。

そして、『スランプの時こそ、僕はバットが持ちたくて持ちたくてたまらない
状態をつくりたいんです。』と言葉を添えました。

「スランプの時に何をするか。」
これが非常に大切な部分なのです。

スポーツの世界でも、ビジネスの世界でも成功するには、
いま結果を出すためにやるべきことと、
将来のために(目先の結果にこだわらず)やらなければいけないことがあります。
正しい目標設定と、やり続ける力が成功へのカギとなるのではないでしょうか。

さて、この話には後日談があります。
マー君の次の登板で、ストレート、スライダーを中心に
マー君らしい投球を見せてくれたのです。
自分がこれから先に追い求めていくピッチングの姿が分かったのだと思います。


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