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武田 美保のコラム「武田VISION」
武田 美保
武田 美保(たけだ みほ)
アテネ五輪 シンクロナイズドスイミング 銀メダリスト

アテネ五輪で、立花美哉さんと、シンクロナイズドスイミング競技で銀メダルを獲得。
2001年の世界選手権では金メダルを獲得するなど、日本人メダリストの中では飛びぬけた数の5つのメダルを持つ。

 武田 美保講師詳細プロフィール
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Vol. 55 『子育ての環境-保育園を訪ねて』
(2009年10月30日)

 昨今、昔に比べて家族の形態が多様化していることはよく言われています。例えば、三世代(おじいちゃん、おばあちゃん、息子夫婦、孫)で同じ家に住むことが減り、逆に増えているのが核家族(お父さん、お母さん、子供)。それに加え社会事情の移り変わりにより、高齢者の、また規制緩和により一気に増加した派遣社員として働く方々や単身赴任など、単身世帯も増えました。

 その中で私は30代前半という年回りで団塊の世代のジュニアに当たります。今は夫と二人暮らしという、核家族です。年代で言えばちょうど"子育て世代"です。そして共働きです。この形態のご夫婦は多いのではないでしょうか。

私にはまだ子供はいませんが、子供がいる生活のことを想像したりすると、この生活形態と仕事と子育てをどうのようにやっていくのか、なかなかその時になってみないと実際にわからないことが多くて、このことについてはビジョンがいつもなんとなくぼやけたままです。周りのアドバイスなどを聞いていると、ビジョンを立てても子育ては想定外のことしか起きないと考えておいた方がいいようにも思いますが...。

 さて、そんなことを考えるお年頃の私に、最近また新たに考えるべきテーマが与えられました。日頃からお世話になっているある方を訪ねて行った場所が、とある保育園だったのですが、伺ってその保育園の設備や教育環境に衝撃を受けたのです。

 まず一つ目。私のこれまでの記憶では、クラス分けを同じ年齢の子を一クラスに集めて保育をして頂いているのが当たり前だと思っていたのですが、そこでは0歳児~1歳児、2歳児、3~5歳児という保育クラスの単位に分かれていました。特に興味深かったのは、そのクラス単位に合わせて外の遊び場が区切られているのです。完全に遮断されている訳ではないのですが、遊具の大きさや種類がそれぞれ体や知能の発達に合わせた造りになっています。まるでこの保育園には3つの別の公園があるようでした。

 二つ目は、教室。全て一室一室が家のように過ごせるようになっていて、トイレや手洗い場(もちろん年齢毎の体のサイズに合わせた造り)が各教室についています。外の遊び場に行く導線も、まるで家の縁側や勝手口から外に出ていくような感覚で、その教室から出ていけるのです。お昼ごはんもお菓子も全部、このお部屋で食べます。

 揃っているおもちゃも楽しいものばかりです。福祉大国のスウェーデンやドイツなどの製品が主になっており、手触りがよく優しい風合いの木でできていて、大きさも幼児が手で握りやすい科学的に実証された規格になっていますし、積み上げ方次第でいろんな建物にも造り変えることができる不思議なブロックでした。情操教育にもとてもいいと思います。

 ふと目線を変えると、小さなベッドで寝かせている赤ちゃんのお人形が目に入ってきたのですが、それにもびっくり。いろんな国の、肌の色が違うお人形なんです。子供たちの成長過程で自然と文化や人種が違う人々が共存しているのが世界なんだということを学んでもらう目的があるそうなんです。

 あとはゲーム。特に3歳~5歳のクラスの場合、5歳児と3歳児では知能の発達の差があるため、どうしても5歳の子ばかりがゲームに勝ってしまいますが、その教室に置いてあるゲームは、運によって3歳児でも5歳児に勝てるようなルールになっています。

 3歳~5歳のクラスは全部で3クラスあり、1クラスは3歳児10人、4歳児10人、5歳児10人の30人単位になっていますが、年齢差のある子供達が毎日大家族の兄弟のように過ごすうちに、人間の上下関係を学んだり、大きい体の子が小さい子を守ったり教えたりして正義感や善悪を学んだり、あるいは頑張ればチャンスは平等に訪れることを学んだり、文化を学んだり。

教え込むというより、本当に自然に子供達が感じとっていくことを尊重されているようでした。保育士の先生も、子供を襲う危険などには目を光らせつつも、子供達に愛情をいっぱい注ぎ、のびのびと育つ保育に関わっていらっしゃる印象を持ちました。

 共働きで、子供さんが一人っ子の場合、生きていくうえで必要な社会性をなかなか家庭だけでは教えてあげられない部分があると思うので、このような保育の機関が身近にあってくれると嬉しいですね。しかし、ここまで整っているところはまだまだ少ないのが現状であると思います。

 また、管轄が厚生労働省とは違う、文部科学省管轄の幼稚園は、保育園とはまた違う教育理念があります。今問題にもなっている学級崩壊。幼稚園は学習の時間がしっかりと取られています。1年生になって学校に行っても、しっかり座って先生のお話を聞く習慣も既に幼稚園でついていますし、体育も英語も子供が能力をどんどん伸ばせるこの年代で楽しみにながら教えてもらえたりするので、それもとても素晴らしいこと。何といっても幼稚園から帰ってから、お母さんと過ごす時間が長いことは、人間にとってなくてはならない感情である「愛情」を子供が学ぶ一番の力であると思います。

 どちらが大切なのか。どちらも大切です。

 それぞれの家庭での教育観は千差万別ですが、時間という観点や金銭という観点などの物理的なこともここには絡んでくるので、選択が難しいことは間違いなく、私もやはりこれはテーマです。

のびのびすくすく子供は育ってほしい。しかし、伸びる可能性は早いうちからどんどん伸ばしてやりたい。仕事がある。だけど子供と一緒にいてやりたい...。これからの日本の社会においても、本当に議論されていくべきことですね。子供がこれからの未来を創っていく宝物だと思いますから。




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