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山本 昌邦のコラム「リーダーの条件」
山本 昌邦
山本 昌邦(やまもと まさくに)
サッカー解説者

2004年アテネ五輪サッカー日本代表監督。現役時代はユース、ユニバーシアード、日本代表とそれぞれの世代で、代表選手として活躍。現役を引退後は、ジュビロ磐田での監督・コーチ、日本代表コーチとして、数々の日本代表選手を育成・指導し、豊富な国際大会での実績と経験は、日本人指導者としては特筆すべき存在。



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Vol. 13 『『東日本大震災復興支援試合』で一日限りの監督に』
(2012年01月25日)
 昨年末、一日限りの現場復帰を果たしました。12月23日に仙台で行なわれた東日本大震災復興支援試合「クリスマス・チャリティーサッカー2011』で、JAPANスターズの監督を務めさせていただいたのです。

 今回のチャリティーサッカーは、日本プロサッカー選手会の主催で実現しました。国内でプレーする選手はシーズンオフを、海外クラブ所属選手はリーグ戦の中断期間を利用して、仙台に駆けつけてくれました。当日の朝に成田空港に到着して、そのまま駆けつけてくれた選手もいます。

 選手たちのほとんどは前日から仙台入りし、数人ずつのグループに分かれて岩手、宮城、福島の被災地を訪れました。公共施設で地元の方々と触れ合い、プレゼントを届けたりしました。

 プロ選手として活動している彼らは、ファンに支えられているという意識を抱いています。東日本大震災が発生する以前から、ボランティアやチャリティに積極的に参加している選手もいました。短い時間ですが彼らと接していて、少しでも恩返しをしたいという気持ちを強く感じることができました。

 海外でプレーする選手、日本代表クラスの選手は、情報発信力があります。数多くの選手が仙台に集まったことで、被災地の現状を伝えることができたのではないでしょうか。

スタジアムに無料招待された観客の皆さんは、一日限りの特別なゲームを楽しみにしていたと思います。選手たちも被災地の皆さんを勇気づけたい、と意気込んでいました。

 監督という立場で臨む私はと言えば、選手が無理をしないように、ケガをしないように気を配りつつ、観衆の皆さんに楽しんでいただけるような選手の組み合わせを考えました。コンディションの関係でプレーできなかった香川真司、内田篤人両選手も、積極的にゲームを盛り上げてくれました。

 練習もしていない即席のチームですが、各年代の代表チームでプレーしたことのある選手ばかりですし、何よりも個々のクオリティは高いです。ピッチに立てば攻守ともにスムーズに機能していました。g

 試合前にはこんな話をしました。
「ワールドカップ予選のような公式戦ではないから、勝負にこだわるよりもいいプレーを見せよう。公式戦では攻守のバランスを考えたりするけれど、本当はこういうこともできるんだ、というものを見せようじゃないか。伸び伸びと楽しくプレーしつつ、精いっぱい頑張る姿が、被災地に希望や夢を与えることにつながるはずだ」

 そして、選手たちはそのとおりにやってくれたと思います。攻撃の局面では、エンジン全開にプレーしてくれました。我々JAPANスターズが4-2で勝つことができましたが、互いに良いところを出し合った末の結果です。スコアは関係ないでしょう。

 人生には様々な困難が付きまといます。サッカー選手も例外ではありません。
 熾烈な生存競争を勝ち抜かなければ、プロの肩書を得ることはできないのです。プロになってからも、チーム内の定位置争いがある。一度はレギュラーをつかんでも、ケガや出場停止がきっかけでポジションを失ってしまうかもしれない。監督が代われば戦術が変わり、それに伴って選手起用にも変化が生じる。試合に出るのは大変なことであり、出場し続けるのはもっと大変なのです。

 チャリティーマッチを開催する意義は、支援金を集めることにとどまりません。一つひとつのプレーに全力で取り組み、仲間同士を助け合う選手たちの姿勢は、困難に立ち向かう勇気や意思を感じさせてくれたと思います。被災地で頑張っている子どもたちに、そうした思いが伝わったら──今回の試合はさらに意義深いものになったでしょう。選手たちの頑張りを見て、「よし、自分も頑張ろう」と思ってもらえたら嬉しいですすね。

 震災から9か月以上が経ちましたが、被災地の戦いはいまも続いています。試合当日は仙台もかなり冷え込みましたが、長い冬を乗り越えるのは簡単ではありません。大変な忍耐が必要です。

 被災した方々の痛みを忘れないように、サッカーを通して支援を呼びかける。2011年の最後にもう一度震災を思い出してもらう"気づき"の機会として、継続性のある支援へ結びつけていきたい。私自身もこうした活動に、引き続き関わっていきたいと考えています。

 個人的にもうひとつ感じたのは、サッカーの、スポーツが持つ力でした。
この日のスタンドには、心からの笑顔と歓声が溢れていました。日常の痛みや苦しみを、ほんのわずかでもサッカーで癒すことができる。被災地の皆さんへのクリスマスプレゼントとして企画されたチャリティーマッチでしたが、我々プレーする側もかけがえのないプレゼントをいただいた一日でした。




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